mimitakoyaki

悪の偶像のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

悪の偶像(2017年製作の映画)
3.8
難解だということですが、一体どんなもんじゃいと思って見に行ってみましたが、やっぱりワカランとこいっぱいありました。

知事選有力候補のハンソッキュが、さあこれからという時に、息子が飲酒運転で事故を起こし青年が死んでしまいます。
バカ息子が轢き逃げしちゃったものですから、これはもう政治生命が断たれるレベルのスキャンダルになるので、隠蔽工作をしてしのごうとします。
一方で、被害者の父親がソルギョングなんですが、一人息子を殺され憤りながらも、事故当時一緒にいたはずの息子の妻が消息不明なので、必死で探します。
政治家の方も、被害者の妻が目撃してたら自分の隠蔽がバレるわけですから、これまた必死で探して…という韓国ノワールです。

有力政治家vs工具店のオヤジ(しかも被害者である息子は障害者)という対照的な2人の格差対決、そして、失踪した息子の妻は中国の延辺という朝鮮族自治州出身で、韓国系中国人という中国人からも韓国人からも差別される立場で、その辺の複雑な背景がめちゃくちゃ絡んでるので、朝鮮族の事をよくわからない人が見たらただでさえ難解なストーリーも余計にピンと来ないんじゃないかと思います。

これまで見たいくつかの韓国映画で朝鮮族が描かれている作品を見ましたが、どの作品でも貧困、犯罪、差別がからんでましたから、延辺出身者は、不法な形でなんとか韓国に入国できたとしても、仕事もなく、今作でも描かれてるように女性なら風俗で働くとか人身売買とか、男性だと金のために殺人を請負い、階段のとこで殺した挙句ノコギリで親指をギコギコやってお持ち帰りするとか、牛骨振りかざして殴り殺すとか、手斧で人を斬りつけるとか(哀しき獣)、そういう境遇に陥ったりしてました。

この作品では、怪しいブローカーの手を借りて韓国に密入国した被害者の妻も、背景の闇が相当深い上、韓国人から延辺なまりを指摘され、バカにされるシーンがあり、延辺出身の朝鮮族というどうにもならない出自が何をするにもついて回り、追い詰められ狂気になっていくのが怖かったです。

あのシーンはどういう意味やったん?とか、アレは結局どうなったんや?とか、そういう理解しきれない部分もいろいろあってモヤるのですが、それでもハンソッキュとソルギョング、そしてチョンウヒの演技の力によってグイグイと引きつけられますし、もっかい見たらもっとスッキリするのかなと思います。
面白かったです。

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