mimitakoyaki

37セカンズのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
4.0
障害者の性に踏み込みつつ、ひとりの女性が自立していくまでを描いた作品です。

冒頭からお母さんと主人公ユマの密着度がすごくて引くレベル。
とにかく過保護で過干渉、障害のある娘の世話をする事が自分が生きる理由みたいな感じで、共依存的な母娘関係です。

ユマは漫画のゴーストライターとして友人と働いていますが、給料は友人にかなりピンハネされてるし、一緒に作品を作ってる自分の存在がないもののように扱われてたりして、そんなユマの鬱屈とした日常が前半は描かれています。

脳性麻痺で車椅子での生活の中では、確かにいろいろ人の手を借りる場面が多いにせよ、一人前の大人として、一人の女性として認めらないまま、ユマもモヤモヤしながらもそこに甘んじてるところがあり、そうやって生きてきたので、自尊心も肯定感も持ちにくく、いつも自信なさげなユマの声や表情や背中が印象的でした。

しかし、そこから脱却するべく、ユマの冒険が始まり、風俗で初体験をしようと歓楽街をうろつくのも、あまりにも無垢なものだから、悪いヤツに騙されるんじゃないか、傷付けられるんじゃないかと心配になりますが、女装家のオネエさん方や舞さんは、彼女を色眼鏡で見ずに、冒険を応援してくれ、そんなマイノリティの連帯が優しくてほっこりしました。

特に舞さんがめちゃくちゃ素敵でしたね。
ユマの変わりたい気持ちや、自分から未知の世界に飛び込みたい、自分でやってみたいという気持ちを理解してくれ、でもあまりに未熟なユマをいろんな面でサポートし、一緒に遊んでくれ、でもお母さんのことも気にかけてくれてるのが、ほんとに素敵な大人の女性だなと思いました。

タイのくだりはちょっと展開が現実離れし過ぎてるように思えて、あの介護士の男性は何日も休暇取れたのかとか、旅費はどうしたんだとか、ユマに関してはあれだけ過保護に育ってたわけだから海外にも行ってなさそうだし、パスポート取得するまでに何日もかかるけどなとか、そんなアレコレが結構気になって、一体何日音信不通になっとったんや?とか思ってしまいました。

お母さんもあそこまで過保護だと毒親レベルですが、障害を持って生まれてきたのは自分のせいじゃないかという贖罪意識が母親だからこそ強いのだろうと想像できるし、ユマの自立に戸惑い、親離れしていく娘が心配だし寂しいけど、お母さんも少しずつユマの意思を受け入れていくんだろうなと思いました。

最後のユマの明るい笑顔、自分の力で成し遂げられた自信が感じられて眩しかったし、ユマだけでなく同時にお母さんの成長物語でもあるんだろうなと思いました。

7
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