湯っ子

37セカンズの湯っ子のレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
3.3
まず、ヒロインの加山明さんがとても可愛らしい。
この映画に主演するということが、ものすごい冒険だったと思う。彼女の勇気に敬服する。
私はこの映画が作られた意義はものすごく大きいと思う。
渡辺真起子さんのキャラクターが、少し現実離れしているがとても素敵。板谷由夏さんのフラットな態度も良い。2人が現実よりも少し理想に寄った存在なのに対し、神野三鈴さん演じる母親は、現実寄りで、どうしても過保護気味になってしまう様子がとても良く表現されていた。

ただ、私が最後まで気になったあまり、この映画にハマりきれなかったのは、トシくんかなあ。
介護職に就いている私には、トシくんは普段はどのような職務についてるのか?ユマちゃんへの付き添いは無給なのか?深夜勤務は?送迎もしてるし、海外までついて行くし…まだユマちゃんと恋人同志になってるならまだしも、ただユマちゃんのケアをするためだけに飲み屋にノンアルコールで付き合ったり、挙句の果てに海外まで一緒に行くのか?
この映画では、トシくんはただひたすら善良で都合の良い人にしか描かれていない。それが不満だった。

以下、私の勝手な意見です。
ユマちゃんが、初めて歌舞伎町に行き、ドラッグクイーンに「私はどこへ行けばいいんですか?」と聞いて、「どこでも好きなところへ行けばいいのよ〜」と言われるシーンがとても良かった。
置いていかれたラブホテルで、舞さんと、ご贔屓のお客様と出会うところも。
あの歌舞伎町での出来事は、リアルともファンタジーともつかない塩梅がちょうど良い。あの歌舞伎町での一夜をもっと膨らませるだけでも充分見応えのある作品になったんじゃないかと思うのだ。トシくんにとっても、休日にちょっと面白いボランティアをやった良い思い出。
そうすると、最初にあった、母親とのリアルなシーンとの対比もあって、すごく引き立つと思うんだけどな。

この映画が作られたことは、すごく大きな意義がある。役者さん達も素晴らしい。
障害者、そしてその家族にはきちんと目が向けられていて、それは画期的なことだ。だけど、介護者には目が向けられてない。それ以外が素晴らしいだけに、私にとっては惜しい!っていう映画だった。
湯っ子

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