ヒチ

天竜区奥領家大沢 別所製茶工場のヒチのレビュー・感想・評価

4.0
環境音も機械音も動物の声(人間含む)も全て平等に扱われる音響によって、それそれの音が調和し合うのではなくナマでぶつかり合う。人間、犬、機械、茶葉の入った袋までもが画面の主役として並列に写されるカットの数々にも徹底した反人間中心主義の姿勢を感じる。風や機械の持続音をカット毎に変化/切断し、そこに作業音や動物の声を重ねていくことで成り立っている映画なので、実質ドローンミュージック兼サウンドコラージュ。テンポを乱さないために一定の間隔でカットが割られ、それが場の息遣いとシンクロしていく。

所謂ドキュメンタリー/記録映画の中でもかなり作者の意図によって細部まで取捨選択されている作品だけど、そんな必然の世界で唯一自由にフレームの内外を動き回っているように見える犬の存在感に惚れ惚れする。と言っても、この犬もまた綿密にコントロールされた偶然なんだろうけど。個人的には『レニングラード大攻防 1941』のいきなり画面侵入イッヌと双璧を成す。
ヒチ

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