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天竜区奥領家大沢 冬のaのレビュー・感想・評価

天竜区奥領家大沢 冬(2015年製作の映画)
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5本の総括として、ドキュメンタリー映画で大事なことは記録し続けること、それが記憶し続けることに繋がっている。この「天竜区」シリーズ、置かれたカメラが捉えるショットは本当に奇跡のような時間の連続で、被写体である村人にとっては日常であるということを忘れそうになる。「製茶」では同じことの繰り返し、終わればまた始まる、習慣と経験を深くまで追求した人々を真剣に、時にチャーミングに捉え続ける。「祇園の日」ではお盆に帰ってきた子供達が花火をする。ここでもカメラは引いて撮る、夜に花火の残り香を小さく捉えた時、僕らは遠くで小さく煌めく花火に胸を打たれる。「夏」では大沢の夏に何言ってるかさっぱり分からないナレーションを重ねる。雨が滴る涼しげな夏、青白い夜更けに灯る明かり、愛を叫ぶような燈の煙。「冬」では作業に代わって村人達の生活が色濃く、白黒写真を通して人生を見つめ、考える。雪が降る。ゆきが溶ければ土を耕す。ただ耕すだけじゃいい土にならないんだよ、と優しい目と声でこちらを見る。いつこの映画は終わるのか、引いたり近づいたりしながら煽ってくる。休憩しているとチャイムが鳴る、なるほどここで終わるのかと思いきや、最終的に春の訪れを捉えて幕を閉じる。春は必ずやってくる。

オンライントークで堀監督をよく知る2人がおっしゃっていたのは「堀さんは忘却に抗おうとしていた」天竜区シリーズは撮り続ける意志があったというのだ、さらに映画監督は伝統業であるということ、違う監督に引き継いで天竜区が無くなるまで捉え続けて欲しいと思っていたそうだ。亡くなられたのが惜しい。今日18日が命日の堀禎一監督。
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