磯野マグロ

イーちゃんの白い杖の磯野マグロのレビュー・感想・評価

イーちゃんの白い杖(2018年製作の映画)
4.0
【幸せは連鎖する】

テレビ局の長期取材ドキュメンタリーの映画化。この分野は東海テレビが有名でよい作品が多数あるけど、お隣の静岡県、テレビ静岡制作のこの作品も地元密着、単品での採算を考えなくてよいテレビドキュメンタリーの利点をいかした、静かで良心的な作品だった。
障がいをもった姉弟のきょうだいと父母祖父母の6人家族の約20年の記録映画だが、これを見てると、おじいちゃんおばあちゃんが元気で、いなかに住んでて、ほんとによかったなと思う。もちろんいなかだからみんな幸せなんてことはなく、リストラで職をかわりながらものほほんとしたおとうさん、しっかりもののおかあさんがいたからこそだけど、基本的なインフラの部分というか家庭の余裕、社会の余力が都会とは全然違う。泣いて泣いて泣きまくった日もあったのだろうけど、そこはさらりと見せない。
やがて姉は都会の学校で辛い目にあうわけだが、自分が、弟が、なぜ生まれてきたのかを考える力を身につけていた彼女は、なんとか静岡に帰り着いた。子どもの頃からいろんな夢を見て、いろんな夢を捨てながら身につけてきたものが、さいごは奇跡みたいな出会いをもたらしてくれた。
こんな言い方は雑すぎるけど、幸せは与えられたり比べたりするものではなく、自分の中に見つけないといけない。それをふたりのイーちゃんは教えてくれた。
私事ながら、親戚がみんな静岡なので、静岡弁にはとても馴染みがある。いいよねーあそこの言葉。元気で、あけすけで、ちょっと抜けてて(褒めてます)。大好き。
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