幽斎

ブルー・マインドの幽斎のレビュー・感想・評価

ブルー・マインド(2017年製作の映画)
3.8
この作品はジャンル分けが難しいです。配給元は新感覚ホラーと謳ってますが、私は違うと思います。作られたスイス=ドイツ語だとすれば、メルヘン(Märchen)です、メルヘンはドイツ語ですから。現代版のお伽噺と捉えれば、ある程度納得できるのでは、と思います。

それにしても着想が独特と言うか大胆です。思春期の少女が成長する姿を描くのですが、あの様な・・・ これはスイスが四方を山で囲まれてる内陸地故に海への憧れが強いメタファーと成って表れてるのでしょうか? 劇中に何度も水が重要な要素として描かれますが、水とは液体で有り形の無いモノ。まだ社会性に染まって無い精神とは裏腹に見た目は大人びて行く、そのギャップが女性としての成長の危うさを、水に例えて上手く表現しています。水はどんな色にも染まっていく、それを支えるのは親で有り、社会で有るのですが、彼女の気持ちに寄り添わない存在として描かれる。とても思慮深い演出だと思います。

私は男なので深い考察は出来ませんが、少女が大人の女性へと変わっていく中で、得体のしれない疎外感だったり孤独感がつきまとうのでは無いでしょうか?今まで遠慮なく聞けた事が、やがて誰にも理解されない喪失感に変わっていく。物語は少女に優しくない社会に警鐘を鳴らす、と言う意味もあるのでしょう。

最近は「RAW〜少女のめざめ」の様に、新しい切り口としてのホラーと言う衣を纏った人間の葛藤を描く作品が増えてきました。人間の成長をこの様なアイデアで描く事こそ映画的と言えるし、また内容は文学的だと思いました。ポスターのヴィジュアルも綺麗ですが、上手く内容を表してると思います、日本オリジナルと聞いて驚きました。

子供さんを持つ親の方にもお薦め、これはホラーでは無くファンタジーです。
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