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ブルー・マインドの海のレビュー・感想・評価

ブルー・マインド(2017年製作の映画)
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わたしの脇腹にふれている、あなたのやわらかな肌。女は流れる水に似ていると、誰かが言ってた。血、海、雨、砂?そうね、たぶん、死は生の果てにあるんじゃなくて、からだの半分だけ溺れさせあってるわたしとあなたみたいに、隣に、あるんだと思う。知らないということを恥じて、一枚ずつそれを剥いだ。知ることと獲得することは全くの別物であることくらい、とっくに解ってるはずなのに、傷つかないと、壊されないと、新しくわたしを覆っていくこの皮膚を、わたし自身だと思うことができなかった。この歯がすべて生えそろう頃には、もうあなたのことを、あの日のように見つめることはできないのだろう。確かに血を流したはずの脚の間には、快も不快も、痛みですら、おとずれなくなるのだろう。悲しい、さみしい、こわい。いつまでもあなたにしがみ付いて、生きた気になっていたかった。
少女から大人への移り変わり。それを「大人になる」のだと、はっきりと認識できている少女が、一体どれくらい居るだろう。「自分じゃなくなるみたいで怖い。」この感覚をわたしも確かに知っていた。変化と比例しておぼえるのは、喜びでも安堵でもなく、いつも焦燥と恐怖だった。わたしたちが、少女でも大人でもない「何か」に成るあの一瞬が、繊細に大胆に描かれていた。
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