theocats

エリザベス∞エクスペリメントのtheocatsのレビュー・感想・評価

3.0
ネタバレ
堂々巡りのクローン人生に芽生えた自発性

ノーベル賞博士でもあるマッドサイエンティストに「永遠の新婚妻」として造られた? 美しきクローン女子群。
しかし、生体に安定性がなく早期死亡。別の女性博士の協力を仰ぎ改良を試みるが光明は見えない。
仕方なしの措置として、新婚気分と肉体的快楽を味わった後は「禁断のクローンルーム」を覗いたという理由でキチガイ博士自らクローン嫁を殺害。女性博士と息子に手伝わせ死体を穴に埋めるという行為を繰り返していた。
しかし、その次のクローン殺害に失敗するどころか、クローンに博士自ら殺害されてしまう。
外出中だった女性博士はキチガイ博士が殺されたことに気づく前に心臓発作で入院。博士の息子がクローンを手伝い死体を焼却処理。パトロールに来た警官も殺害し同様に焼却処理。
息子の目論見は盲目で字を読めない為、女性博士の日記をクローン女子に読んでもらうこと。そして息子ではなく博士のクローンであることを知る。その時最後のクローン女子が博士を殺したクローンに銃を向ける・・・



ほぼ密室劇。サイコスリラーといった構成だが緊迫感や恐怖感はさほど感じられない。
最初はなぜ禁断のクローンルームに完全に入室できないようにしないのか訝るが、新妻クローンに必ず部屋を覗かせ殺害するのが目的と知り若干沈痛な気持ちに(早かれ遅かれ生体不調に陥るなら自ら殺害の快楽も味わおうという魂胆か)。
邦題には無限大∞マークがついているので同じことの繰り返しと誤認させるが(原題を直訳するとエリザベスの収穫)、それまで博士に殺されていたクローンが、次には博士を殺し、そのクローンを最後のクローンが殺害し密室世界から外に出るというのは、クローン自身の意志の芽生え・成長を象徴したものなのだろう。

博士の息子とされる盲目の男が実は博士のクローンだったというのはグロテスクシュールな描写。これまたクローンに殺害されるという哀れな最期にはこちらも「これじゃ浮かばれんて・・・」と少しブルーに。

個人的には最初はハウスメイドと思っていた女性博士がクローン女子より魅力的に思われ、心臓発作で倒れた時にはいささか残念に感じたものだが、ラスト、最後のクローン女子が閉じられた屋敷を後にするのと同時に、誰も生存者がいない屋敷に一人取り残される描写にこれまたやるせないエレジー感覚に囚われる。(彼女が真実を話しても警察も世間も受け入れてくれないかもしれず、それを見越して自殺するしかなさそうな雰囲気)

総評三ツ星

内容は全然違うがソ連映画「ソラリス」を見た時のような乾いたシュール感覚がちょっと気に入ってしまった。

032009
theocats

theocats