takeratta

楽園のtakerattaのネタバレレビュー・内容・結末

楽園(2019年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

Rating : G (全年齢)


原作は、作家の吉田修一氏の、複数の作品をフックにして作られた脚本。

役者でもあられ、脚本、監督もなさられている、瀬々敬久(ぜぜたかひさ)脚本監督作品。
良く練られて出来ている。

吉田修一氏の、文庫「犯罪作品集」の中から、原作の世界観を壊さず、優れた演者陣でストーリー化したところは、先に書籍で読んでいたので、
どんな流れになるか?!興味があり鑑賞。


ストーリーは主に二つの原作、
「犯罪作品集」の中より、
「青田Y字路」と「万屋善次郎」を織り交ぜ

日本の原風景のような、牧歌的ではない、
土着な、村八分や、
歳上を立てないと、生きてゆかれぬ、田舎の限界集落に起きる、
幾つかの、考えさせられる事件を通し、

それぞれの人間模様から、鑑賞者が何を感じ取り、
何を学び直そうと思うか?を
脚本や作品から、ドン!と、お題を渡される感じ。


今年は自分語りを極力控えますが、
限界集落は実在してて、新聞でしか知らないけど、現実に残忍な事件が起きてるのは知っていた。

新聞にすら載らない、載せられない痴話話も含め、
田舎育ちで東京に出てきた自分も、
何となくそれに似た体験の見聞きが有っただけに、ぐっと引き込まれた。


どうしてそんな陰惨な事件が起きてしまうのか?を
若い知らない我々に、知っておけ!とバトンを渡された気がした。


残留孤児の帰国や、難民申請と
地域社会の和合のための、寄合(よりあい)の存在。

町おこしの役所予算より、寄合が権威勢力だったりする事、

ネットなんか無くても、人の噂が、
実は事実に基づいていなかったり差別や偏見、

残念なことに、小さな限界集落では
土俗的に、スケープゴート(生け贄の山羊)に
され、その命まで奪う事で、丸く収まる。

酷い非道と思うが、そんな現実。
真犯人や事件の真相なんて、どうでもよかったり。
じゃぁ、何故、法があるのか?を
ちゃぶ台返しする、重いテーマ。

好き嫌いは分かれそうだが、
目を避けて通れない、日本に現存するタブーなテーマ。

瀬々敬久脚本は、初期と大昔はピンク映画脚本ばかりだったが、

本作品は、第76回ヴェネツィア国際映画祭
公式イベント「Focus on Japan」正式出品作品


日本の、もう一つの顔を、タブー視し黙認せず
取り上げている切実で壮絶な有り様を、
欧米と違うこの国(銃の無い国)で起きる事件の
特徴や人の想いを良く描けている。

暗く重いテーマだが、
個人的には高く評価したい作品。


監督作では、他には、

「ユダ」(2004年)
「感染列島」(2009年)
「64(ロクヨン) - 前編/後編」(2016年)
「菊とギロチン」(2018年)
「ラーゲリより愛を込めて」(2022年)と

どれも好きな作品で、
また、描くストーリーのジャンルーの幅が広いが、
ひとえに、人の愛や人生と死を描く中から

人々が何にもがき苦しみ、どう至るか?の
一貫性があり、
学びが多く、逆に学びが少ない自分には、胸に刺さる事が多く有る。

社会にいいように使われてしまい、結果、悪い噂でがんじがらめにされ、
気が付けば、大人ですらスケープゴートになっちゃう、残念な日本。

今の若い人々は、自己責任論に押し付けられて、
そこで丸く収められちゃうのを、日本の悪い特性と古きを気付けておらず、

ブラック企業なんて、別の表現でそれが流行り言葉になったりするが
その根底にある、国民性や、風土、世俗文化の
人の心の裏側の部分は、
あまりフォーカスが当たらない。

国民の三人に一人はこころの病と言われる現代。
真面目な人が、結果嫌がされされたり、
それで鬱になって退職してニートになったとしても
それは、本人に能力が無かった訳ではないことが多かったり。

企業勤めして勤務してても、適材適所をわきまえない、ダメ幹部や経営者に問題があり、
正にこの上層が、寄合。

それが嫌で、組織から抜けたいと転職したことも有った。明確な就活失敗だったし、キャリアダウンでもあったが、
自分が経営する側となり、従業員に働いて頂きつつ、社会から必要とされる組織になり、

働くで社会貢献と、従業員の自己実現を両立させる大変さは、
給料をもらう側ではなく、給料を払う側をするようになって、ものすごく自分自身、

あんな過去体験した辛かった、逃げるように退職した、いわゆるブラック企業で、
上が、黒いものを白と言えば、

はい!そうでござい!と
上位下達で、シロで行け!上が言ってるから、
そんなサラリーマンにあるあるな
パタパタも経験した。

馬鹿げているが、
そういうダメな組織もある。

経営者のやり方にNoが言えない取締役会は
じゃー何を普段取り締まってるの?

社長や代表取締役を
取り締まるんでしょ?が未だに出来ない、
経営の未熟さを、学生時代に、ロジカルに
データから経営判断をジャッジする仕組み作りを、ライフワークにしてきていたので、

この作品を観て、はたと、自分の学問の原点に立ち返る想いに、驚き身震いした。

そう、これ!
この、社会の居辛さは、ここが原点と
再確認が出来た。

人は、世間体を気にし過ぎると、
愛し合うことにすら臆病になってしまう、
自分が可愛い、ちっぽけな存在。

それが限界集落なら、しばしそこを離れてみたかっただけ、
東京に憧れたただけ。

そんなほんの気まぐれでランドセル、川にぶん投げて捨てて、ちょいと家出しただけなのが、

とんでもない偏見のまま、事件にすり替わり
悪い噂を立てられかねない。

死に至る前に、故郷が特別(良くも悪くも)と
墓標の前に佇み、御先祖を拝む時に
人は己の人生を振り返り、

死んだ後は無だと思うが、あの人いい人だったよね?!って
想い出に、他人の心に残れるか?憎まれるか?
死で完結して分かるなんて、神が居るならとても残酷。


流石に殺人が日常には起きないが、

他社へ就職した同期が、婚約した相手を遺し、
自死してしまった葬儀に参列したり
弔辞を読むのを依頼される年齢になり、

改めて人生の短さや、無情さ、
他人の冷たさを、学び悟るこの頃。

やり直しが出来る社会を
早く実現しないと
100年後もこの愚かしい社会のままでは、
ちびっ子たちが夢をでっかく描けない。

そんな危機感は常に有って、
タガタメを個人的には頑張っていみている。
名誉欲は、全く無い。


絶望的なラスト手前から、
一縷の生きる希望を得た登場人物たちが、
その後どうなって行くのか?

限界集落は、どうなるのか?
は観終えてから、うーんと考えてしまった。

宿題とすると難問だが、分かんないで投げ出したら、人として、己の在り方を問われるのかなぁと。

良くも悪くも江戸っ子4世代目
失礼ながら、田舎ではない。

かと言ってこの問題を
他人事にも出来ない現実に、
恐れ慄く、愚かな自分がぽつねんと居ることに気付き、

他人に優しく、己に厳しく。
隣人を愛せよ。

から、コツコツとやっていこうと、
結果的に背中を押された、
何回か見返したい、異色作でもある。


犯人探しをしてみるといい。
学べますよ。

何故、作品に、「楽園」と名付けたかを
気付く事が出来れば、
きっとそこに気付けた鑑賞者は、

シロツメクサの花の髪飾りの意味を、
そして、優しさとは何か?!

をつかみ取れた、
及第点を採れた人となるでしょう。

お勧めします!
^ - ^)ノ

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2019年作品
第76回ヴェネツィア国際映画祭
公式イベント「Focus on Japan」正式出品作品

監督 瀬々敬久
脚本 瀬々敬久
原作 吉田修一『犯罪小説集』
製作 :
二宮直彦
橋口一成
千綿英久

製作総指揮 井上伸一郎

出演 :
綾野剛
杉咲花
村上虹郎
片岡礼子
黒沢あすか
石橋静河
根岸季衣
柄本明
佐藤浩市

原作:吉田修一『犯罪小説集』(角川文庫刊)
監督・脚本:瀬々敬久

音楽:Joep Beving
主題歌:上白石萌音「一縷」(ユニバーサルJ)
作詞・作曲・プロデュース:野田洋次郎

エグゼクティブプロデューサー:井上伸一郎
製作:堀内大示、宮崎伸夫、松井智、楮本昌裕、杉田成道
企画:水上繁雄
プロデューサー:二宮直彦、橋口一成、千綿英久
アソシエイトプロデューサー:飯田雅裕
ラインプロデューサー:石渡宏樹

撮影:鍋島淳裕
照明:かげつよし
録音:髙田伸也
美術:磯見俊裕
装飾:大庭信正
スクリプター:江口由紀子
編集:早野亮
VFXスーパーバイザー:立石勝
タイトルデザイン:赤松陽構造
音響効果:岡瀬晶彦
音楽協力:安川午朗

スタイリスト:纐纈春樹
ヘアメイク:リョータ

助監督:海野敦

制作担当:田辺正樹
配給:KADOKAWA
制作プロダクション:角川大映スタジオ
製作:「楽園」製作委員会
(KADOKAWA、朝日新聞社、ハピネット、ユニバーサル ミュージック、日本映画専門チャンネル)

興行収入 : 3億円
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