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楽園のriesz77のネタバレレビュー・内容・結末

楽園(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

線が繋がりきらない。届きそうで届かない、不完全な円のような。もう少し見たかった。ここで終わるのかという残念さが残るけど、杉咲花、綾野剛、佐藤浩市のそれぞれが光っていて見応えあり。代えのきかない演技力に圧倒されたので、話は消化不良でも、嫌いじゃないむしろ好きな映画だった。

主役の3人以外の演技も引けを取らないくらい光っていて、閉鎖的な田舎の世界観に入り込めた。吉田修一原作の映画はほぼおもしろい。今作もその部類だけど、『悪人』『怒り』『パレード』ほどには及ばなかった。帰りに原作を購入してパラ読みすると、短編集を組み合わせてるらしく、繋がらないストーリーに納得できた。

あいかちゃんの迷子の事件、12年後の話、善次郎の話がそれぞれ進むが、最後は畳み掛けるように切り替わる場面がおもしろくてスリルがあった。『パレード』や『怒り』のようなショッキングな結末を期待していたので、スッキリしなかった。

杉咲花のセリフで、北海道のジャガイモ、沖縄のパイナップル、栃木のレンコンとか、全国各地から届くのが楽しいってセリフに共感できた。想像するだけでも楽しい。すごくわかる。ただ劇中に何度か出てくるセリフで「どこに住んでいたとしても、何か変わるわけじゃない」とあり、想像と現実は乖離していて、そんな救われない世界に何か期待してしまう、杉咲花の役に一番共感できた。楽園をずっと追い求めていきそうな紡。あいかちゃんのことは忘れない程度に振り切って、幸せになって欲しい。そんな純粋な役柄だった。

愛情が足りないことによって崩れていくそれぞれの人間像が他人事に思えなくて、その点もこの映画の魅力だと思う。引き込まれてしまうのは、原作の力が一番大きい。

ということで帰りに原作を購入しました。
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