マツリ

楽園のマツリのネタバレレビュー・内容・結末

楽園(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

『怒り』を書いた作家さんと同じ作家さんという事で観てみた。
監督は、『64(ロクヨン)』の方なんですね。

この作家さんの描く作品って、人間が生々しく描かれている印象。
『怒り』でもそうだったけど、今作も生々しい人間が詰まっていた。

少女失踪事件後に、似たような事件が起きて、その時になって青年が怪しいと言い出す住民の1人。
その発言で、集まっていた人達が一気に動き出す。
あれは、怖い場面だった。
一斉に青年の家に行く姿、玄関をこじ開けようとする姿、蹴破る姿、もう憑りつかれてる感が強くて、人間の怖さが表れていた。
結果、青年を追い詰めて、最悪な結果を生んでいたけど。

その後の祭りを楽しむ住民達の姿が、さらに怖い。
集団で追い詰めて、青年は焼け死んでいるのに、犯人は死んだという事実に安心して、祭りを楽しめるって怖いね。
この時点で、青年が犯人かどうかは分からない状態。
だからこそ、犯人ではない人が焼け死んでる可能性を考える人が、
追い詰めた住民たちに居ないというのが怖い。

失踪した少女と直前まで一緒にいた親友と孫娘をなくした男性が、
結構辛いものがあった。
孫娘が亡くなって辛いのは分かる。犯人が捕まってない怒りも分かる。
当たりどころがなくて、生きている親友に向けてる男性の姿も怖かった。

そして、村八分になり孤立を深め壊れていく男性。
これは、集落の人達の手のひら返しが怖い。
集落の中で、少しでも足並みを乱すと、徹底的に潰しにかかる姿。
謝罪しようとしてる男性に、全員無視して立ち去る姿は、子供かとも思ったけど。
その後、どんどん孤立させていく様は、集落の怖さを感じた。
ああいう集落が、時代に取り残されて無くなっていくんだろうなぁ。。。

後半の少女失踪事件の真相は、何とも言えない気持ちになった。
今になって思えば、青年の楽園は母親だったんだろう。
その母親が、自分ではなく男を選んだ事で、他の人の楽園に影響を与えてしまった。
孫娘が楽園だった男性。
孤立した男性は、亡くなった奥さんが楽園だった。
集落の人達は、集落が楽園だった。
失踪した少女の親友は、自分が楽園を持って良いのか思い詰めていた。
楽園を持つことは良い事だけど、執着しすぎると人に害が及ぶ。

孤立した男性の結末は、辛いなぁ。
はちみつ事業、良いじゃない。
男性の話に聞く耳も持たず、挙句に、飼い犬まで閉じ込めさせて。
あまりに酷い仕打ち。犬が噛みついたのは、絶対に住民が何かしたに違いないと思っている。
温泉に誘った女性も、何がしたいのかよく分からなかった。
普通、温泉に誘う!?精神的にも弱ってるであろう男性を、混浴の温泉に誘って、一緒に入ったりする!?
襲うのは良くない事だけど、襲われて泣いてる姿を見て、そういう関係になりたかったんじゃないの!?って思った。
だったら、一緒に温泉入るなよって感じだった。
佐藤浩市さんの演技、凄かったわぁ。

綾野剛さんのガソリンかぶる場面も凄かった。
役者、みんな体当たりな作品だった。

個人的に、村上虹郎さん演じる幼馴染の性格は好きじゃない。
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