hosh

未知との遭遇 ファイナル・カット版のhoshのレビュー・感想・評価

3.8
『フェイブルマンズ』を見に行くので。スピルバーグの有名作の中でなぜか後回しにしていた作品。UFOとのファーストコンタクトの調査過程と電気技師ロイの行動が常軌を逸していく過程が交互に描かれ、やがて交差する。

『JAWS』や『E.T.』のパーフェクトな完成度からはほど遠い歪な作品だけど、スピルバーグのUFOや恐怖への拘りと演出テクニックが感じられてとても楽しかった。

自分は日常に異物が混入して来る時のゾクゾク感が大好き。だから、飛行機の交信というマクロな異変から動き出す猿人形や玩具、荒らされた冷蔵庫。とバリーの家の中のミクロな異変へと
”予感”の演出が繋がっていくのが最っ高だった。何かただならぬ物が来てしまった…という興奮をこれでもかと味わうことができる。

ロイが初めて円盤に遭遇する踏切の場面もいったん車の前フリがあってからの、動き出すポスト、浮き出す紙、異常な光。というジリジリしたテンポ感がたまらない。これぞ映画の快楽。中盤のUFOがバリーを探しに来るシーンも家庭の中の穴を中心にしたホラー的な手数全開で楽しすぎ。スピルバーグは本当に不気味な演出がうまい。

内容は数少ない監督自身が脚本を手がける作品ということもあり個人的なものに見えた。子ども大人な主人公ロイ。宇宙人という実在するか分からないものに取り憑かれ、家族を蔑ろにしてしまうさまは自身の離婚の経験や形のないもの=創作に没頭してしまう姿勢と重ねているのかな。夫婦喧嘩を隣の部屋の扉越しに見て涙を流す子供の撮り方が印象的だった。これは『フェイブルマンズ』でも語られるのかね。

最後に、スピルバーグ作品に登場する子どもっていつも目がキマっていて怖い。純粋ゆえの暴力性を持った存在として描かれているよね。バリーも攫われてしまう被害者側なのに異様な好奇心で突き進む。そのため、大人から見ると手に負えない恐怖の対象って感じだ。主人公ロイも子ども大人なので同じ目をしている。奥さんからしたら理解不能な存在であるというね。
hosh

hosh