正直に打ち明かせば、
「老い」に恐ろしみを覚えてしまう。
時の流れに逆らえるものなし。
歳を重ねるにつれて、私たち人間は豊かになって、そして「幸せ」を形づくる。
目指すべき人生の方向性は分かっていても、現実は必ずしも願いの枠に留まってくれるとは限らない。
活字が好きで読み物を読み漁り、
気分に乗って歌やリズムを口ずさむお父さん。
自由な表現や選択が、健全な生活をもたらしてくれる。
一方、受ける側のお母さんは一つの質問に3度4度聞き返されては、話を続けるのも難しい。
いつしか日々の習慣は、アルツハイマー型認知症という病としてお母さんの自我を蝕み始める。
ずーっと支え合い生きてきて、お互いの長短全てを受け入れ寄り添ってきた2人こそ変えられないものもあるのかもしれない。
自分でも頭で理解していながら、
どうにもできないと抱く歯痒さと遣る瀬無さに、お母さんが見せる苦しい表情が見ていて本当に辛かった。
一方でそんなお母さんを、今まで一度もやったことのない家事(料理や裁縫まで!)をこなして、一生懸命に支えるお父さんの逞しさに尊敬する。
何よりもいくつになっても学ぶことを決してやめない姿勢。
一方でタラレバだけれど、お父さんが補聴器を使っていたらほんの少しだけ、2人の日常は変わったのでは?と思ってしまうのも正直なところ。