LalaーMukuーMerry

Girl/ガールのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

Girl/ガール(2018年製作の映画)
4.3
LGBTのL「ラフィキ 二人の夢」に続いて、次はLGBTのTの作品。
          *
最近はLGBTの最後にQを加えてLGBTQと言うことも増えてきた。性は男と女のようにはっきりと2分されるものではなく、性に関係する遺伝子は100ほどもあるという(性染色体だけではなく残りの染色体にもそれらの遺伝子は散らばっていて、様々な性の形質発現に関係している)。だからそれらの遺伝子の発現のしかたの強弱によって男と女の間には非常に多くの段階グラデーションがある。こういう人をQ(クイア)と呼ぶらしい。QとTは分類の物差しが違うのではっきりと区別できるものではなく、QでありTでもある人もかなりいることでしょう。
          *
さてこの作品、バレリーナになることが夢の16歳のトランス・ガール(性自認が女、体は男)ララのお話。大変な努力家で一流バレエスクールに転校できた。スクールの先生方も、他の生徒たちもそのことを知った上で彼女を受け入れているという恵まれた環境。もちろん父親(事情はわからないが母親はいない)もとても理解がある。
          *
けれど彼女自身は劣等の自意識?が強くて、無口でうつむき加減。悩みを一人で抱えがち。ホルモン療法で男の性徴を抑えているが、早く性転換手術をしたいと望んでいる。けれど無理がたたって体力・元気が低下気味、そうなるとホルモン療法も危険だからと薬の量を増やしてもらえない。日頃の処理の仕方がまずくて性器に炎症をおこしてしまい、性転換手術は当分延期になってしまった・・・落ち込むララ・・・
          *
カメラがとても近く主人公に迫り、バレエレッスンや日常生活(着替え、シャワーetc)の様子を、ドキュメンタリーのように描く。セリフはほとんどないけれど、そのことでかえって彼女にempathyを抱くようになるしかけ。すぐれた作品と思います。
          *
周りの理解がこれだけある中でも、こういうことになってしまうのは、もう周りのせいにはできないレベルじゃないかとも感じました。難しい問題ですね。(バレエスクールの女友達による問題シーンが1つだけあって、彼女は傷ついたと思うのですが、それとて彼女たちの態度はかなり大人なあっさりしたものだったように感じた。もちろんしないに越したことはないのだけれど・・・)
          *
主人公ララ役を演じたビクトール・ポルスターはシス・ボーイとのこと。よく演じましたね、凄い。