Tully

ステータス・アップデートのTullyのネタバレレビュー・内容・結末

ステータス・アップデート(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

冴えない男子高校生・カイルが、不思議なスマホアプリ・ユニバースを手にしたことで人生を変えていく姿を描いた青春ドラマ。情報収集から買い物、更にはゲームまで、何でもスマホアプリで済むようになった現代。もしも、自分の悩みやコンプレックスがあっという間に解決できる魔法のアプリがあるとしたら?私個人として、そんな疑問を持っていたのが鑑賞動機だ。謎のおっさんからユニバース入りのスマホを手にしたカイル。物語の前半では、彼がユニバースで次々と願いを叶えていく。この部分なんでメッセージを送るだけで車や観覧車が出てきたり、歌がうまくなったりするのというツッコミはありつつも楽しめた。歌うまになりたいと打ち込んだらオペラ歌手になったり、アイスホッケーのはずがアイススケートになったりといった「ミステイク」には笑わせてもらった。後半、シャーロットの登場により「魔法」が次々と解けていくのだが、同時にこの作品の核心も見えてくる。元々カイルは転校早々、デレクたちホッケー部の面々に目をつけられ、ボコボコにされてしまった。そんな状況で手にしたのがユニバース。これを使ったことでデレクたちをギャフンと言わせ、SNSの人気者となり、人生の絶頂にたったカイルだったが、シャーロットとの2ショット写真、そしてカイルが一目ぼれしていたダニーの友人・ブライアンの告発を境にそれらが崩れてしまった。劇中、「SNSの投稿は嘘ばかり」みたいな台詞があったが、まさにこれがこの作品の核心。カイルはデレクのような人気者になりたいと焦るあまり、自分の本心を見失い、ダニーや男友達・ロニーといった身近な親友とも距離をとってしまった。ユニバースという「魔法」が解けたカイルは、再びありのままで生きることを選んだ。それはSNSなどの周りに左右されず、自分らしく生きることの大切さを訴えるメッセージだ。そして、この作品にはもうひとつの要素がある。カイルの両親は別居状態で、カイル本人は父親・ダリルとの生活を惜しんでいた。それもユニバースで「解決」したように見えたが、結局は元通り。だが、本心を取り戻したカイルはダリルと別れることを決意した。おそらくこれは、人生の重大な選択に「魔法」は通用しない、というメッセージだろう。今回は両親の離婚問題だったが、カイルはこの先も進路先など様々な選択に直面するはず。その時こそ、自分の本心で考え、選び出すことが大事だと感じたかもしれない。
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