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グリーンブックのarichiruのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.2
2度目の鑑賞。やはりこれは名作。何かが解決するわけではないが、こういう映画が、純粋にいい映画だなと思う。

この笑えるのに心温まるという路線は、寅さんの名作をも思わせた。偏見と差別の渦巻く深刻なストーリーの中に、うまく笑いを入れられるレベルの高さ。馬鹿にしたり自虐せずして、良い意味での「違い」や「ズレ」を笑いに変換する。うまく裏切ってくるセンス。
形が違うからぶつかるのだが、だからこそはまるパズルのよう。ケンタッキーの件は絶妙だった。重い映画を、軽くしてくれる。

シャーリーの寛容さ、我慢強さ、繊細さ、脆さの表現も素晴らしく、チンピラのトニーの対比が明確。これだけの差別や偏見の中でトニーからすらどう見られているのか知った上で、それでもトニーを信頼し、またトニーもそれに応え、その変化や助けに接しシャーリーは救われていく。シャーリーの中にも偏見や確執があったのだと。

ポイントは妻のドロレスだった気がする。ドロレスが差別しない人だからこそ、トニーのようなチンピラをも愛するのかもしれないし、一方で、トニーの憎めない人の良さや面倒見の良さがあってこそ、ドロレスも寄り添うのだろうか。この二人が夫婦ということこそ、実は不思議と納得。違っているということを、違っているからこそうまく乗り越えている。
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