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グリーンブックのasatoのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

本質的な主題であるドクが抱える孤独は映画のストーリーとしてはよくある話に思える。
それでもこの作品が素晴らしいと感じるのは崇高なミッション設定とイタリア系おじさんのコントラストが最高だからかな。

己の才能と受けてきた教育、そして差別との闘争に身を置いた結果振り返ると黒人でも白人でもなくなっていた。孤立していたドクに心の拠り所や寄り道の大切さを再認識させたという話。
再認識というのは、ドクは元々社交性のある人だったように思うから。
作中を通してドクは誰よりも道徳的であり続けたし、人の温かみや喜怒哀楽を表現していたと感じた。始めは知性と品位故に冷徹な印象を与えていたが、実際のところ彼は人間が持つ優しさの塊の様な存在に見えた。
彼は品性と尊厳をもって差別と闘ったが、これはガンディーの不服従と近いものがあると思う。そう考えるとこれは差別と向き合う唯一の手段なのだろうか。
一方でイタリア系の底抜けの明るさは世界を救える力を持っているのかもしれない…

それにしてもアメリカは建国以降、同じ問題を抱え続けているのだなと感じる。
労働力としての奴隷黒人を、イデオロギー戦争に敗北したとは言え南部の白人は経済的に手放せないし、心理的にも難しかったはず。
もしかすると白人の損失はそのまま黒人への憎悪に変化したのかもしれない。
理解し難いが、それは脈々と現代にも受け継がれているという事なのだろうか。

アイデンティティとホームの大切さを教えてくれる、暖かい作品だった。
あと、音楽聴きに行きたくなる。
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