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グリーンブックのPoMooNのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.0
実際にあった話をベースにしているのが刺さる。題材は重く理不尽さはあるが、作品自体は暗くはなく、軽めのタッチで描かれていて見やすい。

雇い主シャーリーは黒人ピアニストでインテリ、リッチ、著名人。黒人差別の強い南部へコンサートの旅に出る為、腕っぷしの強いトニーを運転手に採用。トニーは職が欲しい白人、ではあるがイタリア系、というのがミソだ。南部は差別が酷い事がわかっていながら、何故シャーリーはコンサート巡業に行くのか?の謎もある。

教養があり、繊細で道徳的なシャーリーに対してガサツで粗野で無学なトニーは正に正反対。二人の旅はぶつかり合いもあるが化学変化を起こし、互いを受け入れ融合して行くシーンが面白い。その途中には、例え著名であっても黒人というだけで、招かれた屋敷でもトイレは外の掘立小屋、レストランには入れてもらえない、一般のバーに行けば問答無用で殴られる、夜に黒人は歩けば逮捕、理不尽な事ばかり。トニーは最初黒人嫌いだったし、金の為に雇われるが、旅でシャーリーの演奏を聴き、黒人差別を目の当たりにし変化して行く。トニーは単純だが、芯が素直なのでシャーリーの言葉も心に入って行く。旅が終わる頃は、二人は互いを理解する存在となる。エンドクレジットの二人の写真とふたりに関する記載が嬉しい。

今作品で「グリーンブック」を初めて知った。調べてみると、郵便配達人だったグリー氏が1936〜1963年迄、発刊したグリーンブックは単にアフリカ系黒人のガイドブックに在らず。白人至上主義、過酷なアフリカ系黒人への差別に対して少しでも嫌な思いをしなくて済むよう宿泊や食事施設、給油所など示されている。当時公共機関を黒人が使え無いという理由もあるが、それでも車を使える中級階の黒人は多くはなかったようだ。作中でトニーがグリーンブックで宿を調べているシーンが何度かある。特に南部の人種差別は酷い。運転手は白人、後部座席に黒人は当時異様なものとして映った事が、ポリスの驚きや、農作をしている黒人達の表情に示されている。

「ドライビング・ミス・デイジー」の中でもモーガン・フリーマンは給油所でトイレを使えなかったシーンがある。今回はそれより多くの差別シーンがあるが、助けに入ったトニーもまたイタリア系への差別を受けるシーンもある。

2017年、南部へ行った時はアジア系、特に中国人に対しての差別が酷かった。タクシー運転手の話では、中国人が大量に流れて来て、職場に侵食、職を奪って行くからチャイニーズヘイトが増長していると言っていた。中国人も日本人もあちらにとっては区別でき無いから、全部中国人になってしまう。日本人とわかって態度を変える輩、英語が出来れば、オッ?とした顔をする輩もいるが、高級ビラに居てもあからさまに悪態をつく輩もいて、人種差別を経験した。作品の時代は人種差別は当たり前のことで、問題にする方がクレイジーと見られた時代だから映画よりもっと酷い事実が想像できる
No.1139
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