うぇい

グリーンブックのうぇいのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

イタリア系のトニーはプライドが高く喧嘩っ早い、相手に合わせて自分を偽りはったりをかます。
黒人のシャーリーは品位を高く保ち信念があり、我慢強い、相手に自分を合わせようとは思っていない。

トニーとシャーリーは全くの正反対であり、トニーに至っては黒人への差別意識を持っていた。

二人の共通言語となったのは音楽であり、トニーはシャーリーのピアノに惚れ込み、金ではないシャーリーへの敬意から仕事をするようになる。

シャーリーは指折りのピアニストにも関わらず、腕以外の全てを世間から認められずにいた。それは黒人だからである。そして、黒人だからという世界に安住した黒人と異なり、人間としてのシャーリーは孤独だった。南部でのコンサートの中で、ピアノと共に品位ある自分自身を受け入れてくれる人間がいると、それを探していたのだろう。

トニーはシャーリーのピアノを「すげえ」と評し、「あんたにしか弾けない」とシャーリーを丸々1人の人間として受け入れた。
そして、喧嘩っ早く、田舎者で、家族を食わす為に働くしか能のない自分こそが「黒人」だと悪態をついた。シャーリーにとってアイデンティティである「黒人」を否定し、自らこそを「黒人」と言ったチャーリーはそこで「黒人」だからという偏見が決定的に意味を持たないことを悟っただろう。

最後の演奏、シャーリーは、ステージの上でしか評価をしない人間の元から去り、人間丸ごと受け入れてくれたトニーのために、そしてピアノと奏者を不可分のものとした人々のためにジャズを弾いた。

プライドと品位の差、受け入れてくれる人がいる事実と共に受け入れない人もいる。
アイデンティティの形成の為にはその人全てを受け入れる、愛を持った他人の存在は必要不可欠だろう。
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