Tom

グリーンブックのTomのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2回目の鑑賞

「一体誰が決めたんだ?」
シャーリーのこの言葉にこの作品のすべてが集約されていると思った。

旅の至る所で黒人のシャーリーに対する差別が見受けられる。それは単に侮辱されるとかいうものよりも、本来受けられるであろうサービスを受けられないという権利の剥奪のようなものが多かった。
「土地のしきたり」とかいう言葉とともに個人的な差別ではないというレストランの支配人も、それに従っている時点でその差別を作り上げている一人なのではないか。

雨の中、議論の末にシャーリーが涙の訴えをするところは何度見ても来るものがある。
高貴な生活をしていても白人ではない、黒人コミュニティに属しているわけでもない、女性が好きな男でもない、一体自分は何者なんだと。

「見た目やステータスで人を判断してはいけない」

シャーリーも最後に訪れたバーでこのような発言をしていたように、これがこの作品が伝えたい一番のメッセージなのではないか。
トニーも一見白人で差別をされることのないように見える。それでもアメリカではマイノリティのイタリア系で差別の対象ともなる。
トニーが警察に侮辱されたときのように、後ろから車を止められるシーンがラストの方で登場する。しかしそれは、車のパンクを教えてくれただけで何とも優しい警察官だった。
これもまた、「見た目やステータスで人を判断してはいけない」ということなのだろう。

最初に書いたことを踏まえて補足的にまとめると、
社会には先入観や差別意識で形成された考えやしきたりが多くある。それらは「一体誰が決めたんだ?」という問いかけ。それに対する答えが「見た目やステータスで人を判断してはいけない」ということ。

一つ気になったのは、トニーのシャーリーに対する差別意識に関して。雇い主だからということであっても初めは他の黒人同様に捉えてる部分があったと思うが、それは最終的になくなっているように思えた。
その要因が、単に距離が縮まったからなのか、シャーリーの才能に魅了されたからなのか。はたまた他の黒人に対する意識は変わったのか。自分はシャーリーとのやり取りを通してそうなったと思っているが。
もしシャーリーの才能に魅了されてそこから意識が変わったのだとしたら、才能のない被差別者が差別をする側の意識を変えることは困難とも言える。そう考えるとやはり歴史的に積み重ねられてきた差別意識を変えることはそう簡単ではないと思い知らされる。
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