喜連川風連

グリーンブックの喜連川風連のレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.5
普通であれば交わることのない
天才ピアニストドン・シャリー

ハッタリと機転の良さで数々の修羅場を潜り抜けてきたトニー。

彼らが黒人差別残る南部での公演を通して、人種を超えたつながりを得る過程を描きます。

脚本・人物描写・展開、どれを取っても平凡で見るべきものはありませんでしたが、これが生粋のアメリカ人であれば、見る視点が変わったのだろうと思います。
(実話ベースの作品を母国人以外に説明する難しさ。例えばプロジェクトxやこの世界の片隅にの面白さを同じように熱狂的に生粋の米国育ちの人が評価するとは思えない)

当たり前ですが、アカデミー賞はアメリカ映画を讃える賞であって、各国共通の諸手を挙げて大絶賛する作品でないと思いました。

日本国は、米国や欧州からの舶来品、評価されたものに弱いですが、この映画への絶賛がその最たるものなように思います。

英語圏内でないと理解できない笑いやジョークも多く、なにより、物語の根幹になっている黒人差別の切実さを、簡単にこの映画で理解した気になってはあまりに失礼な気がしました。

黒人が飲んだコップをゴミ箱にすぐ捨てるほど黒人を毛嫌いしていたトニーが、車で一緒に過ごす中で、自身の先入観がすべての黒人に当てはまらないし、よっぽど白人である自分の方が下品だということに気づかされる物語の逆転構造と懐かしの栄光のアメリカ的映像、家族劇などが評価されたのだと思いますが、それ以上でもなく面白みはなかったです。


日本でいう、
オールウェイズ三丁目の夕陽
とか
東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜に近いでしょうか。

この作品だけで、
アカデミー賞さすが!とか
ハリウッドを神格化するのはあまりに浅いし、世界と日本を区別してる島国根性全開のようで暗澹とした気持ちになりました。

ひねくれている意見かと思いますが、
この映画のレベルなら日本でも作れます。

むしろ、この映画を見て、日本のコンテンツ産業もまだまだ戦えると希望を持ちました。

あまりに平凡かつ王道でしたが、
車がカッコよかったこと、拍手から雨音への編集、アメリカ各地の風景、
そして、分かり合えない人たちが音楽という共通言語を通してわかり合うシーンが好きです。
特にトニーが汚いピアノに激怒して、
満足げにその後の公演を見ているシーン。
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