ひれんじゃく

グリーンブックのひれんじゃくのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.7
再鑑賞。もう一度見直したことでかつて抱いたモヤモヤ感を把握できた。よかった。

全体的に穏やかな緑色がメインに据えてあって美しかった。2人を乗せてアメリカを駆け回る車のボディの色。お守りとなった石の色。「黒人専用」のホテルを記した本の名前ではなく、2人を繋ぐ架け橋の色としての緑色。

白人のコミュニティにも黒人のコミュニティにも、どこにも属せなかったドクが居場所を見つけていく様、差別に対して違和感を抱いていくトニーの変貌、そこらへんも丁寧でよかった。やっぱり車がエンストして止まった時に、柵を隔てた向こう側から農作業をしていた「同胞」がドクをじっと見つめるシーン、あそこすごいなあと二度目も思ってしまった。あそこでドクの抱える断絶とか孤独がスッと入ってくるというか。

レストランのくだりとかテーラーのくだりとかトイレのくだりとか、挙げるとキリがないけど「お前ら面倒くさくないのか??」と頬杖ついて眺めていた。面倒臭くないの?すごいな…そこまでして差別をしたいんだな………物事をスムーズに通すことよりも、ゴタゴタが起きて事がややこしくなってでも差別をしたいのか。すごいですよその熱意。

ただやはりどうしても違和感を覚えたのは主人公はふたりです!というテイを装いながらも、結局は完全にトニーの物語になってしまっていること。ドクとトニー、それぞれが差別を受ける側であり、さらにその中で差別をする側と差別を受ける側に分かれているという複雑さ、それを跳ね除けて2人が友達になっていく様を描くはずじゃなかったのか。完全にドクが「トニーがいい人となっていくための踏み台」にされていてアララ…となってしまった。ラストの家族団欒に突撃してきたドクのシーンとか特に。いつから、何のきっかけでトニーの父親はレイシストを辞めたんだ。描くなら一貫してほしかった。
白人に助けられるアフリカ系の人々、もしくは白人の力を借りて自分を見つけていくアフリカ系の人々。それはちょっと違うんじゃないのかなあ。外野の私が言うのもなんだけど。トニーの言葉にドクがハッとするシーン>ドクの言葉にトニーがハッとするシーンだったような。ここまで来ると逆に、ブラッククランズマンとこれを並べると描き手の世界観の差がありありと見えてきて面白い。こんなに違うものなのだなあ。惑うアフリカ系の人々を教え導く白人像はもうそろそろいいんじゃないか?と思うなど。
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