ひこくろ

からっぽのひこくろのレビュー・感想・評価

からっぽ(2018年製作の映画)
4.2
まちが自分に対して感じてしまう「からっぽ」感が、あまりにも痛々しく胸に迫ってくる。
自分には何もないと感じてしまうことは誰にでもあることだろう。
だからと言って、何もなくてもいいやとは思えないのが現実だ。

まちは恋人の由人に「何か」を感じ、惹かれていく。
でも、由人との関係が深まれば深まるほどに、自分のからっぽ感だけが募っていってしまう。
しまいには、由人の語った言葉を暗記して別の男に語り、その男との関係を続けていこうとしさえする。
その姿は、あまりにもいびつだが、簡単に否定できるものではない。
誰もが感じてもおかしくない、「自分のからっぽ」感が、やっぱりそこにはある。

惜しむらくは、この痛々しさを最後まで貫けなかったとところだろう。
雪山のロッジからラストにかけては、かなり雰囲気に流されて映画が作られている感がある。
そうではなく、最後の最後まで、まちの痛々しさを描き切ってほしかった、と強く思った。
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