eye

からっぽのeyeのレビュー・感想・評価

からっぽ(2018年製作の映画)
3.7
からっぽ(2018)

PFFアワード2018
エンタテインメント賞 受賞作品

弁セレで見逃していた作品で
劇場で鑑賞できるチャンスがあって
とてもラッキーだった

映画の主人公は渡良瀬まち(23歳)

365日朝昼晩いくつものアルバイトを
ローテーションする云うならばスーパーフリーター

スーパーフリーターは職種によって
いくつもの "顔" を使い分けて生活してる

飲み屋でのバイトで
画家の青年 岡崎 由人 と出会い 

彼の あどけなさに まちは恋をする

由人の描く絵は迫力があり とても美しく
まちは描かれる通りの素敵な存在になっていく

劇中でも

>彼の描く私があんまり美しいもので「あっ、私こうなっちゃおう」って思っただけなんです。

と語っている

まちは次第に由人の家に居候し始める

周囲にその雰囲気が周囲に分かるくらい
大きく華やかに変わっていく

由人はまちの肖像画を描き続けて
2人は順風満帆のような形で過ごしていく

沢山掛け持っていたバイトは次第に減り
コンテナに入っていた洋服その他荷物も減る

最終的にコンテナは "からっぽ" になる

コンテナ自体が自身の心のメタファーとなり
彼との生活に徐々に染まっていく様子が描かれる

しかし

キャンバスの中に描かれた
自分への違和感を感じ 次第に陰りがみえ

由人のセリフ

>まちさんはこんな狭い部屋にはいないでしょ

このフレーズが突き刺さる

その頃 芸術専門ライター 糸川洋が現われる

まちは 元来 由人の持っていた不器用さ
若干の挙動不審さが転移した結果

糸井への浮気が始まる

まあ あらすじはこの辺にしておいて

そもそもこの映画は野村監督を投影した映画

「昔付き合っていた小説を書く彼氏から野村監督へ投げかけられた言葉に違和感を感じて生まれた」

とのこと

人の中に描かれる"自分"がテーマである一方
監督自身のアイデンティティを問うた映画

「本当の自分とは」

という疑念から生まれた作品であり
結局のところ本当の自分は存在しない

人が人と接する場面において複数の仮面を
つけ付け替えるように生きている

C.G.Jungの唱えた"ペルソナ"を見事に体現した
まちの人物像には驚いてしまった

この映画は恋模様をポップな形で描いている
そのため浮気を描いても重苦しさを感じない

様々なバイトの度に見せる顔が変わり
華やかなキャラから陰キャラまで七変化する

この映画の良さといえば、、

静かながらも自分を見つめ
人(男性)を否定することなく
それぞれの優しさを肯定する部分

それがあのラストに繋がり

まちが由人の画材を見て

彼の日常を垣間見る

いつもの まちの微笑みをみせつつ
小屋から立ち去っていき白銀の世界を
1人自転車で漕いでいく

観衆に壮大な景色と真っ白な暖かさを見せてくれる

人は出会い そして 別れる

恋人関係を凝縮したような映画であり
その恋の終わりも体感できる

観終わったあとの劇場に妙な寂しさが残ってた
eye

eye