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からっぽのtetsuのレビュー・感想・評価

からっぽ(2018年製作の映画)
4.1
タイトルに惹かれて鑑賞。

居酒屋でバイトをする"渡良瀬まち"は、ある日、店にやって来た売れない画家"岡崎"の頼みで一晩を共にするが...。

というあらすじからは予想もつかないジャンル不特定ムービー。

美大生が作る作品と聞くと、物語要素が少ないアニメーションや、抽象的で観客に想像の余地を残す作品ばかりと勝手に思い込んでいたのですが、予想以上に分かりやすく斬新な展開が楽しい一作でした!(しかも、50分という手軽さ。)

日常からほんの少し外れた絶妙な物語、何度も使われる印象的なテーマソング、内容が詰め込まれていてもそれを感じさせない作品の独特の求心力。
集中していると、いつのまにか終わってしまう不思議な鑑賞体験でした。

なにより、『からっぽ』というタイトルからは想像もできないほど主人公がハイスペックという驚き。笑
並外れた吸収力には畏怖の念さえ感じましたし、主人公が持ち前のスーパースキルで身近な人を助ける姿は、もはやヒーロー映画でしたね...。笑

また、服やショートケーキといった要素で映える赤色や対照的な雪の白色など、惹きつけられる色彩の豊かさ。
「絵」という要素を使って「他者によって作られる自己」というテーマを示唆していた部分は、美大生らしい感性だなぁと思いました。

というわけで、ラブストーリーであり、サスペンスであり、コメディでもあった本作。
少しモヤっとしなくもないラストシーンには好き嫌いが別れるかもしれませんが、魅力的で奇妙な世界観には、いつの間にか引き込まれてしまう一作でした。

参考
自主配給ってどうやるの?ミニシアターのリアルな現状に突撃!:若手女性監督に密着! - シネマトゥデイ
https://www.cinematoday.jp/page/A0006418
(公開に至るまでが書かれた記事。)

からっぽ【PFF2018】
https://aoyama-theater.jp/pg/3480
(有料ですが、コチラで配信中。)


以下、同時上映していた短編の感想もメモ程度に残しておきます。

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「道子、どこ」
☆×3.6

マンションの一室にパンクな服装に身を包んだ二人の男女がいる。
些細な出来事がきっかけで、思わぬ方向へ進んでいく彼らだったが、彼女には"ある秘密"があって...。

他者との関係性によって構築される"自己"というテーマをみると、『からっぽ』の原点となる作品だったと思う。
彼女が探し続ける「自分」に対する1つの答えが提示されたかのようにみえた終盤が、意外なラストで落ち着くのが面白い。

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