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オーファンズ・ブルースのslowのレビュー・感想・評価

オーファンズ・ブルース(2018年製作の映画)
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歪なモザイクの集まりが、何の違和感もなく、むしろ美しいものにさえ見えてくる。けたたましい音と光。このミシミシと軋む眠りが、あなたと同化する夢なのだと、今ならわかる。彼女が振り向く度に記録は擦り切れ、証明されることのない肌膚の纏わりとなって発つ。見落とされた反世界の記憶は、そもそもこの頭には存在などしない。

これ卒業制作作品なのだそうで、監督が映画を撮れる機会を無駄なものにはするまいと存分にやりたいことを詰め込んだという本作。確かにそれは露骨な程で、ここまでやれば潔く清々しさが勝り、気が付けば、ただただその初期衝動の塊から目が離せなくなっていた。特徴的だなと思ったのが反復する会話。忘れていく、という特殊な事情もあったからだとは思うけれど、昔の日本ドラマや映画のようだなと感じた。印象的だったのは、吸い込まれるようなスカイブルーや汗を照らす橙色のネオン。鮮やかな色とアジア特有の湿度だ。これは一粒の光を懐古する、極私的なロードムービー。
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