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シアノスのeyeのレビュー・感想・評価

シアノス(2018年製作の映画)
3.7
"シアノス" (2018)

このタイトル

シアン(ギリシャ語)の語源
映画のトーン自体 どことなく暗い青

松本監督は

少年未満→少年になる

ストーリーをイメージしたそう

ストーリー自体は







田舎町で少女の失踪事件が起きる

少女は失踪直前 田んぼを歩き
森の中へ入っていった

その最後の目撃者となった少年

森の茂みの中で少女の幻影を追い
彼女の遺留品を見つける

リップベビーを拾う場面や通学バッグには
包丁も入っている

包丁は男性器のメタファーで
少年は自身の掌を包丁で傷つける

そして少年は家で彼女のリップベビーを塗る

手の甲で拭くときに包帯に色がつくことから
口紅の意味もあり 女性性の象徴と見立てられる

多感な思春期にいる少年は夢精してしまう

少女は失踪前より自分の作り方・成分を
YouTubeにアップロードしていた

少女とは家が近い以外に接点がなく
YouTube上で間接的に気になっていく

という

"性の目覚めを体験している"

少年は母子家庭で父親がいない

理科室で薬品を盗む際 事件を調べる刑事が
校庭のようなところを歩いている

少年は理科室から目があったときに瞬時
カーテンを締めて男性をシャットアウトする

後半 森を出た後に刑事に追いかけられるが
自分の体力の限界から追いつかれてしまう

ここは男性性から追いかけられるという
抽象的な部分のメタファーだそう(監督より)

理科室でのカーテンを閉める行為も
男性性の排除のメタファーだと分かる

突如現れる男性に対する
恐怖心・対抗心が描かれている

森で拾った彼女のリップベビーを逃げる際
落としてしまうシーンがある

男性(刑事)に拾われるも
彼は「自分のじゃない」と否定する

女性性の象徴であろう物を落とし

それを否定することは
女性ではなく男性として生きることへの
メタファーでもある

家では専ら少女の作り方の動画を観つつ
成分を読んで復元を試みる

ストーリー終盤 少女の動画はYouTubeから
削除されてしまう事象が起こる

そして少年は大量の水をがぶ飲みする

水には少女を復元するために合成した
薬品を混ぜたであろうことが推測される

水を飲んだ少年は
お腹が痛くなって 森で排泄してしまう

結果 取り込んだであろう少女は流れて
自身の中から出てきた排泄物を省みる

という部分が後半にあたる

広く茂った森の中に寝そべる行為や排泄する行為
自体が "子宮"の中に返っている

少年は"赤ちゃん返り"をしている

終盤

少年は森で見つけた少女の制服や下着・鏡
などの遺留品を大事に保管していた

しかし 一斉に燃やす

鏡は他者と自分/少女と少年を写していたが
それを捨て去ることで心に潜んでいる

"少女と決別する"

少年は神社の一本道を1人歩いていく

このシーンについては
"決別・成長"をロングショットで見送る

という形を意図したと監督より語られていた

"変態" 〜metamorphose〜 (2014)は
少女→男性性を意識する行動

"シアノス"(2018)では
少年→女性性を意識する行動

両作品にシンクロする

"包丁で傷つける"

鋭利で強力な男性性のシンボルが
ストーリーのキーでもある

意識と無意識をはっきりさせつつ
"思春期"
という軸に焦点を当てている

移ろいやすい時期且つ群像劇の中で
成長していると感じられる

シンクロするようなテーマで個人的には
楽しめて発見がある映画だった
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