糸くず

19歳の糸くずのレビュー・感想・評価

19歳(2018年製作の映画)
3.3
二十歳を目前にして揺れ動く思いを吐露する19歳の女子のありのままの姿をとらえようとするドキュメンタリー的な物語。

9割9分「私」についての話でできている映画だが、そこに押しつけがましさやうざったさはない。監督と「私」との距離感が絶妙なのだ。

特に、橋の上での咲希(=「私」の表面)とめぐみ(=「私」の裏面)とのやりとりは非常にスリリングで、自分の内の思考のせめぎあいをこうした形で描き出したのは見事である。

しかし、監督の言葉を聞いたかぎりでは、描写は意図的なものではなく、直感によって導かれたもののようで、長編を撮るような体力はまだないように思える。

この映画には「他者」がほとんど出てこない。一番「他者」に近いのは同じ学校に通う男性であるが、彼の顔は映ることがないし、言葉を発することもない。彼は川の向こうの遠い存在でしかない。

監督が先に進むためには「他者」の発見が必要不可欠であると思うが、彼女は映画を撮ることによって「他者」への糸口をつかみつつあるようだ。「他者」が見えてくれば、その向こうにある「世界」も見えてくるはずである。いつか「私」だけではない物語を紡いでほしい。

第40回ぴあフィルムフェスティバル
PFFアワード2018
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