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19歳のeyeのレビュー・感想・評価

19歳(2018年製作の映画)
3.6
"19歳" (2018)

短大に通い 20歳を目前に
就活・就職する前に改めて

"大人になること"

を自覚する 道本 咲希 氏

どこか自信が持てず 不安な心情の
飾らない等身大の姿が映し出されている

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映画冒頭
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>私は20歳で死ぬものだと思っていた
>誰も私のことなんか分かってくれないし
>私も誰のことも分からない
>私には未来なんてない
>いつも明日を儚んでいる

肥大化した自己意識の中で

"色んなことが上手くいかない"

という鬱屈した雰囲気を纏っている

撮影当時19歳というリアルとフィクションが
並行する世界で作成されたストーリー

誰でもない自分のためのストーリーであって
自分を客観視し自己分析で切り取っていく

>何でもいいから自分を表現したかった

道本 咲希 氏はカメラを持って
日常の中の風景を写真に収めている

→瞬間の移ろいやすさ
→瞬間の貴重さ
→日常の中の嘆き・焦り

それぞれが混ざりあって描かれている

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映画中盤
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>私は20歳では死なないし
>そんなことはずっと知っていたし
>思ったこともない
>ただそうなればいいなと思っていただけ

穴の空いた靴下を
履いてしまったことに気づいて

わざわざ また縫って履いたのに
それを脱ぎ捨ててしまうように

気分や考えは瞬きと同じくらいの
スピードで変わっていく

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映画終盤
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>20歳になったら死ぬものだと思っていたとか
>就活してる友達を見てたら焦ってしまうとか
>川向こうを歩く男の子が運命の人だとか
>訳の分からないことを言っていたら
>知らない内に私は20歳になっていた

取り留めのない考えは無限に広がって
移ろった気持ちを吐露する

ビルの屋上で友人めぐみに訊かれた質問を
道本 咲希 氏は もう一度反芻する

>カメラで何を撮るの
>何で(写真が)撮れるの
>目の前の景色がそんなに綺麗なの

ビルにカメラをかざすと
眼前に広がった景色は

"海"

考えや想いが無限に広がっていて
広く・遠く 壮大な景色と意識が描かれる

やがて "景色" ・ "心像" は明るくなり

映画のはずが その風景がまるで

"写真"

かのように錯覚させられる

道本 咲希 氏自体が1人の人間として
等身大の肖像になって映し出しされる

川べりの風景
ジャングルジムの風景
海の風景
夕暮れの風景

それぞれの風景が差し込まれる

写真は自己顕示欲を
満たすためのツールではなく

カメラそのものが自分を
承認してくれるツール

夜の闇の中 空に浮かぶ月に
シャッターを切らず

自らの手のファインダーで月を覗き込む

世界は今まで写してきたものとは異なる

月が照らす世界をまるで自分が見る世界を
信じるかのようにピントを合わせていく

劇中で自身が話していたように

捻くれながらも快活な女性であってほしいし

歳を積み重ねて もっと大人になっても
不安や悩みを抱えていくだろうし

人生という物語は これからも続いていくけど

もっと自分を愛することができれば
世界がまた違った角度から見られる

「私の見てる世界は写真に写すほどのものでもない」と友人のめぐみは語ったけど

人との価値観の違いはたくさんあっても
自分を大切にしていくことができれば

日常を儚んでいくばかりの毎日でもなくなる

簡単に崩れ落ちそうな 微妙な心のバランスが
逆に自分を強くしてくれるし 成長させてくれる

心が大人になっていくまでの成長の一端を
垣間見られるそんな物語
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