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米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯のKUBOのレビュー・感想・評価

4.5
瀬長亀次郎、すごい男だ。

特に、佐藤栄作との1対1での討論が素晴らしい! あの佐藤栄作と対等に、いや圧倒するその気迫あふれる熱弁! そして、当たり前のことだが、ちゃんと議論が噛み合っていることに感動してしまう虚しさ。聞かれたことをはぐらかし、原稿の棒読みを繰り返す今の国会とは全く違う。もし、今の国会に瀬長がいたならば、安倍にも菅にも「ちゃんと答えなさい」と喝を入れてくれるんじゃないかな?

TBSの佐古忠彦さんによるカメジロー映画の第二弾。

本作では、瀬長が残したたくさんの日記から、瀬名の思いや、家族のことなど、人間瀬長亀次郎が描かれる。

「マクトゥヌ イインカイ ユミヤヤタタン」(真実の上には弓矢は立たない)

「ムシルヌ アヤヌ トゥーイ」(筵のあやのように まっすぐに)

この瀬長の母の言葉が、亀次郎の不屈の精神を形作った。

考えてみれば、終戦後すぐアメリカに統治され、私有地を没収され米軍基地にされた沖縄の人たちにとって、それは今我々が考える「日米安保で日本を守ってくれる」基地でもなんでもなく、父や、母や、子供たちを殺した敵国の軍隊が勝手に居座って作った基地であり、そのまま20数年間、米軍による圧政の象徴であったわけだ。

「基地のない沖縄」「基地のない本土復帰」を目指した瀬長の闘いは、沖縄県民の思いであり、至極当然の気持ちだろう。

だが、県民の支持が大きいだけ、米軍は瀬長に恐怖し、瀬長を罪なき罪で投獄する。

この際、島流しになった宮古島で、私が懇意にしていた宮古島の映画館パニパニシネマの館長さんのお母さんが、投獄中の瀬長の髪を切ったという話を伺ったことがある。瀬長の髪を切ったということが語り草になるほど、瀬長亀次郎という人間は沖縄県民に慕われていたのだ。

1970年の「コザ暴動」。沖縄県民を車で轢き殺した米兵が無罪となった糸満市の事故の後、コザでも酒気帯び運転の米兵が沖縄県民を轢き、抗議の群衆が拡大した事件。今のアメリカの Black Lives Matter と同じだ。

沖縄はこの後、1972年に本土復帰を果たすが、アメリカがもたらした民主主義が、結果、沖縄からアメリカを追い出した結果となり、皮肉なものだ。

「小異を捨てずに大道につく」この瀬長の言葉は、今の「オール沖縄」の精神にもつながる。

今も沖縄を取り巻く基地問題は、本質的には何も変わっていない。

私は沖縄に数十回は通っている沖縄フリークだが、瀬長のことも、沖縄のこともよく知らない人には、ぜひ本作を見て、少しでも戦後沖縄の歴史と思いを知ってもらいたい。

語り:役所広司。

音楽:坂本龍一。

素晴らしいドキュメンタリーである。
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