延々と歩く

バスターのバラードの延々と歩くのレビュー・感想・評価

バスターのバラード(2018年製作の映画)
4.0
 コーエン兄弟の手がけるオムニバス西部劇。

 この人らの映画っていつもシニカルでぱりぱりに乾いてるからアレなんだけど、なんやかんやで大体おもしろい。ヴェネツィア映画祭で金オゼッラ賞(脚本賞)を得たというのも納得。そのわりに最初の2話が勢いまかせな気もするがまあ~ああいう感じに妙に元気な人っているもんな。

 そのほかのエピソードもよく出来ており、どれも目を引くアイデアが仕込まれている。開拓期におけるどうしようない悲劇、その反対にある追い詰められた人間たちの驚くべきエネルギーが語られていた。

 いつも乾きすぎぃ!って書いたけど本作では「荒野と大自然にながれる詩情」がかなりエモい。とはいえアメリカの風景特有な厚ぼったさみたいなのはなんか合わないのだが。

 第五話「早とちりの娘」でゾーイ・カザンの好演が見られて嬉しかった。美人なのに兄と一緒で早とちりな面があって、ちやほやされたことがないかされても居心地が悪くて受け入れられて無さそうな、安定してない人物のヘンテコさがいい。災難つづきのコメディなのにいきなり直球のロマンスになるのもリアリティがあり暖かい気持ちになれる。まあそこはコーエン兄弟なのでそれだけで終わらないのだが。
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