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華氏 119のmitzのレビュー・感想・評価

華氏 119(2018年製作の映画)
3.0
2016年11月9日、共和党から第45代アメリカ合衆国大統領となったドナルド・トランプ。キャッチコピーにもある「トランプ王国は必ず崩壊する」とあるように、マイケル・ムーア監督作品らしい徹底したリサーチと映像資料、そしてそれ以上に巧みな編集効果により反体制を謳ったドキュメンタリー風映像作品です。
過去の作品同様マイケル・ムーア作品らしくある種独善的な見解と解釈が多く、近年飽和状態にある"based on true story(事実+演出)"作品として捉え、ある程度距離を置いた方がエンターテイメント性は増幅されます。
とは言え「対岸の火事」として鑑賞する他国民と比べ、自分事として逃れることのできない愛国者たちはひとつのプロパガンダとして受け入れなければならない事実があります。
内容はトランプ政権の批判はもちろん、民主党についても痛烈に問題提起し、大好物のライフル協会やフリント水汚染問題など多岐に渡ります。その上でSNSを通じて強力な発言権を得たティーンエージャーたちを「未来への希望」として描いている場面は、マイケル・ムーア監督の狡猾さと同時に非常に危険なプレゼンテーションのように感じました。
兎にも角にも、このようなひとつの主張(思想)を映画という媒体を通じて人々に訴えかける、しかもそのテーマが国政であること。大統領選挙の結果に一喜一憂することができる国、それだけでもアメリカ社会の成熟度を感じます。

良くも悪くも、他人を貶して私腹を肥やすことを生業としている2人の男の「正義」の話です。この作品が中間選挙にどのような影響を与えたのか、今から結果が楽しみです。
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