アン子

津軽のカマリのアン子のレビュー・感想・評価

津軽のカマリ(2018年製作の映画)
5.0
【竹山以外にも、青森や後継者についても描く】竹山の演奏を期待するのに応えるかのように、映像も音楽的だった。
字幕のフォントにこだわりを感じたし、カットやズームインも静的というより堂的だった。
初代竹山以外にも、2代目の演奏やねぶた祭りの人らの演奏もあって音楽が盛りだくさん。
初代があまりに有名になりすぎて、2代目が健常者で、女性ということに正直違和感は持ってしまっていた。
初代の演奏は最盛期だけでなく、一番最後の演奏も流された。一番最後は重症の中ぎりぎりの状態での演奏だったため、あり体に言えば酷かった。それは事実上最後の演奏で、観客に顔を向けずに弦ばかりに向いているのは、その人の人生を表すように懸命にはじいているようにも見えるし、あんな名人でも衰えが来ることを感じさせもした。
もう聴けない演奏のことをいつまでも賞賛するがいいけど、もうその人はいないんだから、今聴ける人を過去の人を見ずに評価したいな、と思った。
初代があんなに大きな背中となってしまったため、特に地元青森では襲名への批判は強かったらしく、、
劇中でも【貧乏に色々教わったことがある】と初代が言っていたらしいから、初代と同じ貧乏は味わえなくても近いぐらいの苦味は味わえてるのかな、と初代の映画の話なのに2代目のことばかり考えてたらエンドロールになった。

父の背中を偉大に感じすぎると、自分がどんどんちっぽけに思えるけど、父を知らない別の人は私から見るんだからがんばらなきゃ、と自分を無理やりにでも励ましたくなった。自分の背中を届かないけどタンッ!って叩きたくなった映画でした。
アン子

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