アキラナウェイ

ベル・カント とらわれのアリアのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

2.6
ちょっ、待って。

渡辺謙と加瀬亮が出ていて、加瀬亮の役名がゲン・ワタナベなのはどうなの?

1996年にペルーで起きた日本大使公邸占拠事件に着想を得た原作小説を映画化。あくまで"着想を得た"だけなので、舞台はペルーの日本大使公邸ではなく、登場する日本人も2人のみ。

南米某国の副大統領邸で開催されていたパーティーに突如テロリスト達が雪崩れ込み、副大統領邸を占拠。人質の中には日本人実業家のホソカワ(渡辺謙)と、彼が愛してやまないソプラノ歌手ロクサーヌ・コス(ジュリアン・ムーア)の姿が。一味の目的は収監中の同志の解放だったが、政府との交渉は平行線が続き、事態は長期化の様相を見せる—— 。

英語が話せないホソカワことケン・ワタナベの通訳者ゲン・ワタナベ(やっぱり笑う)を演じた加瀬亮の話す、英語とスペイン語がお見事。

流石にその速さでは訳せまい…と思ってしまう、台詞丸覚えっぽさも見受けられたが、相当に努力した筈。

語学好きとして、通訳のシーンは楽しめたが、他は残念な点ばかりが目立つ。

オペラ歌手を演じたジュリアン・ムーア。当然ながら口パクな訳で。これ、それなりに歌える役者をキャスティング出来なかったのだろうか。口パク歌唱シーンでは興醒めしてしまう。

膠着状態が続き、テロリストとの奇妙な交流が始まる。それはまさにストックホルム症候群(シンドローム)。

チェスを囲み、
歌を歌い、
サッカーをする。
ついでに恋もする。

…待てーい!!

サッカーまではいい。
何ならホソカワとロクサーヌの間で芽生えるロマンスはわかる。しかし、ゲン・ワタナベがテロリストの中の1人の女性と恋仲になるのは、心がついていけない。

一度でも銃口を向けてきた相手と、そんな貪りつく様な熱烈なキッスをするだろうか、ゲン・ワタナベよ。ゲンくん、通訳者らしく常に冷静で、一歩下がって前に出ないタイプの筈なんだけど。

緊張感が走るのは序盤だけ。

実際に起きた日本大使公邸占拠事件でも、人質の完全な解放まで4ヶ月掛かったと言う。中盤、特に何が起きる訳でもなく、中弛み感は否めない。

ラブストーリーは突然に。
事件解決も突然に。
呆気ない幕切れ。

"ベル・カント(Bel Canto)"とはイタリア語で「美しい歌」「美しい歌唱」を意味する言葉で声楽用語のひとつ。

最後に口パクのジュリアン・ムーアで締められてもなぁ。

日本人キャストの活躍は嬉しいけれど、結局何を伝えたかったのかよくわからない作品。