ムギ山

ジョーカーのムギ山のネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

いくつか留保はありつつも、面白かった。いま最もヴィヴィッドなトピックである「格差」をこれだけストレートに描いて、ちゃんとエンタメになっているというのはすごい。またジョーカーという悪役が、たんに個人の意志と才能だけでできたのではなくて、民衆の悪意の結晶として生み落とされたのだという力学が見事に映像になっていて素晴らしい。

いくつかの留保とは何か? ひとつは、映画の最初のほうでアーサーがバスで乗り合わせた女性に「私が笑うのはある種の疾患のせいなのでご理解ください」というカードを見せるのだけど、これは本当なの? もし本当だとしたら、ジョーカーが笑うのは別におかしくて笑っているのではないということ?(あと「病気のせいで笑っちゃうのだ」と告白された通りすがりの市民はどう反応するのが正しいんですかね?)

もうひとつは、この映画はミスリードをねらった語り方をしていてそれが後半のサプライズにつながるのだけど、たとえば『シックス・センス』みたいに明快な種明かしがあるわけではないので、あとから思い返してみると「じゃああの場面は妄想のひとつなのか、それとも現実だったのか?」「あの場面は?」「あの話は?」と、キリがなくなってしまうのである。下手すると元同僚を惨殺したことさえ虚構と考えてもおかしくないし、その調子でお話のすべてがアーサー・フレックの妄想でした、というふうに解釈してしまうと、もうこの映画そのものが成り立たなくなってしまわないですか?

評判通りホアキン・フェニックスがすばらしい。あとロバート・デ・ニーロの殺され方が雑すぎてびっくりした。
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