シネフィル野郎

ジョーカーのシネフィル野郎のレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.7
ハロウィンには遂にホアキンフェニックスばりに煙草を燻らせる『ジョーカー』の模倣犯が現れて大変でしたが、ネットの反応を見てるとこんな中途半端な格好悪い奴と一緒にするなとか言ってる無邪気な人が多くて笑ろたわ。なら彼がより周到に準備した劇場型の事件で以って暴動を煽れば良かったのかと突っ込みたい気持ちはさて置き、捨て鉢になって秩序を壊したがってる人って意味ではジョーカーもその便乗者も本質的には同じ穴の狢なんよね。本作の公開から暫くは主人公アーサーの姿に自分を重ねてる様な発言をしてる人も少なくない頻度で見掛けたし、観る者に「無敵の人」の追体験をさせてその思考様式への誘導を試みるという点では確かに危険な映画ではある。ただ優れた芸術は時代の通念を揺さぶるのも常であって或る種のリトマス紙めいた側面を持ってるとも思うので、本来はカルトな評価に留まるべき映画が多くの共感を呼んでる現状はどこか社会が病理を孕んでる証左なのかも。今思えばヒースレジャーが演じたジョーカーは終始一貫した狂人だったし感情移入の余地は小さかったとは言え、スタイリッシュな悪役が世の中の耳目を集める下地を作ったと考えると『ダークナイト』も業深い一本ですなぁ。
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