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ジョーカーのfumingのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.6
バットマンの悪役にして、もはやヴィランの代表選手とでもいうべきジョーカーのスピンオフ作品。
重い。とにかく陰鬱。ジャックニコルソンやヒースレジャーが演じたような、狂人故の超人、コミカルさの奥底に悪のカリスマが光るような浮世離れした人物ではなく、今作のジョーカーは日常の青年が変化してしまった経緯と人柄にそこはかとないリアリティを感じる。そういう意味でも今作のジョーカーはリアリティがあり、「リアルな怪人」としてある意味どんなホラー映画よりも恐ろしい。それを見事に演じ切ったホアキンフェニックス氏も見事である。
本作の難点と挙げるならば、少々映画的な明快な面白さやエンターテイメント性が欠けているところであろう。アメコミ原作とするならばなおのことだ。本作は派手なアクションがあるわけでもなく、難解なトリックを解決するわけでもなく、ひたすらにジョーカーの苦悩する姿と格差社会の息苦しさを叙述するような内容である。おかげでダークさとセンセーショナルさは群を抜いているが、まるで解決策を提示しないライフハック本でも読んでいるような気分であり、伝えたいメッセージの先行が強すぎる。
総評としては、現代に生きる人は一度は観ておくと良い映画だと思う。特に若い人。しかし、暗い画といつまでも晴れない濃い霧のようなものが立ちこめる映画であり、楽しめる人をわりと選ぶと思う。このジョーカーにはせめて、これけらは悪の化身となって第二の人生を楽しんで欲しいと願う。
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