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ジョーカーのぴんじょんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0
『モダンタイムス』ですよね?

ベネチア映画祭で最優秀賞にあたる金獅子賞を受賞したという事で一気に期待値が高くなってしまった本作。

バットマンシリーズの人気悪役、ジョーカーの誕生秘話だというのですから期待値が高まるのも当然かもしれません。

僕も久しぶりに、公開早々に劇場に足を運びました。

期待にたがわない作品でした。

最底辺で踏みつけられている主人公を演ずるホアキン・フェニックスの演技力もさることながら、あの痩せぎすで貧相な肉体や、なさけないブリーフが印象的でした。

貧富という格差の拡大、一部の金持ちが利権をむさぼる…どっかの電力会社の役員と地方都市のお役人さんのことかな…。福祉の切り捨て、障害者への差別、児童虐待、ネグレクト…なにしろ児童相談所が全く機能してないんだから…、マスクでのデモ…これは香港を思い出しちゃったけど…。と、もうこれは現実の世界、いや日本そのものではありませんか。

踏みつけられ、足蹴にされた、心優しき人間が、テロや無差別殺人に走るのもやむを得ないのではないか、と思わせます。。

もちろん、テロも無差別殺人も許されるものではありません。
しかし、苦しむ庶民をほったらかして、金もうけにばかりうつつを抜かしている一部の輩(やから)が私腹を肥やし続けるならば、いつかジョーカーは生まれてくるんでしょうね。
安倍さん、『ボヘミアン・ラプソディ』も、もちろん良いけど、この映画も見といたほうが良いんじゃないかな。

マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』の影響を語っている方もいました。
僕も、善良さから次第に狂気に陥っていくアーサーの姿は『タクシードライバー』に似ているなと思ったのですが、本編の中で一部が使われているチャップリンの『モダンタイムス』は設定から展開まで、まるでネガとポジのように瓜二つだと思えました。
たぶん、あの時代と現代とが似てしまっているからなんでしょうね。

バットマンのスーパ-・ヴィラン「ジョーカー」の誕生のお話だとしたら、想定の範囲内でわかりやすすぎ、インパクトに欠けるのですが、映画は時代を映すものですから、まさに現代を切り取った快作(怪作)と言えると思います。

2019/10/5 22:09
988-2
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