みつき

ジョーカーのみつきのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.9
ジョーカーは、人殺しを喜劇と捉えることで、コメディアンとしての自分を世間に認めてもらおうとした。意地悪なことにこの映画自体も、ジョーカーの凶行を喜劇的に表現することに肩入れしてしまっている。

今も経済格差が根強く残り、若者を中心として多くの人々が社会不安を抱える時代だからこそ、殺人鬼主観の映画が作られてしまったのだと思う。この映画を観ると、大多数の人間がジョーカーの境遇に共感してしまい、面白い映画だったと感じるだろう。実際に私もそうだ。

私は、終盤でジョーカーを取り囲む暴徒たちを、自分自身と重ね合わせた。底辺層による破壊的活動の象徴となったジョーカーにカルト的なかっこよさを感じてしまったならば、映画を観ている我々も、画面の向こうで仮面を被る有象無象と大差ない心理を抱いていることになる。ジョーカーという極悪人を喜劇的に描写し続けた挙げ句、最後の最後で「この映画を観て楽しんでいる貴方たちも同罪ですよ」と指を差されたような気がして、腹立たしくなった。

痛烈な皮肉の効いた面白い作品だと思います。
みつき

みつき