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ジョーカーのjojoのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.9
タイトルにもなっている「ジョーカー」とはアメリカンコミックスの「バットマン」シリーズに出てくる有名な敵の名前で、今回の映画では年老いた母親と暮らす心優しき男が、狂人であるジョーカーになるまでをシリアスタッチで描ています。
 

まずいきなり結論から言うとこの映画、「出来はいい!でも観るのは自己責任で!!」という非常にお薦めしにくい作品なのです。
 

というわけで、勝手ながらわたくしが独自の基準を設けましたので、以下の物を一つでもクリアしている方は観ても「大丈夫」だと思いますよ、たぶん。
 
①今現在少しでも幸せを感じて生きている。

②体は健康だ。

③家庭環境に恵まれている。

④経済的に安定している。

⑤この社会に不満はない。

⑥未来に希望が持てる。

⑦仕事は順調だ。

⑧信頼できる友人、同僚がいる。

⑨現在、孤独ではない。

⑩過去に陰鬱な映画を最低でも一本は観ているが、その後の人生に支障はなかった。(例 ダンサー・イン・ザ・ダーク、セブン、ファニーゲーム、淵に立つ等)
 

一つでも該当する方は、鑑賞後にドンヨリした気持ちになっても、すぐに回復出来ると思います。
 

逆にこれらに一つも該当しない方は、この映画は娯楽として楽しめるどころか、強烈な劇薬になってしまい、今後の人生がえらい事になりかねないのであまりお勧めできません。
 

なぜならこの「ジョーカー」は最初っから最後まで、ひたすらボーリングの玉1億個分ぐらいの重苦しい空気のまま、「いくら正しい事をしても報われないんだ!」ということを全力で描きつつ、それでいて最後は実に奇妙な爽快感あるため、人によっては悪影響を及ぼす可能性があるのです。
 

この映画で僕が非常に怖いと思ったのは彼を変貌させていく物が、悪い宇宙人や悪魔から能力を与えられるとか、マッド・サイエンティストが作った薬品によって覚醒するといった荒唐無稽なものではなく、病気、貧困、失職、虐待、先の見えぬ将来への不安、そして孤独と、すべて我々の現実に存在し、今も日常にもありふれているものだという事です。
 

それらが、じっくりジワジワと彼の心を汚染していき、ちょっとずつ、そして確実に彼を狂気の世界に導いていくのです。それゆえ似た境遇に置かれている方にとっては、メンタル的にキツイ描写がこれでもかと出てきます。
 

日本での上映ではR-15指定(15歳未満鑑賞禁止)になっていたので、鑑賞前はバイオレンス描写が多いのかと思っていたのですが、実際はそうでもなく、実はこのハードなストーリーそのものに規制がかけられたのではないかと思うようになりました。
 

僕らぐらいの昭和世代なら日本昔ばなしのトラウマ回なんかで、少しは免疫が出来ていると思うのですが、今の若い方で初めてこの手の陰鬱な映画を観る人は結構ハードルが高いかもしれません。うっかり初デートで観たら、あとで気まずくなる事間違いなしなので、くれぐれもお気をつけください。
 

というわけで観る人の幸せ度がチェックできる映画「ジョーカー」。ぜひ劇場でご鑑賞ください!(結局薦める)
 

最後にこの映画で感じた不満点なのですが、あのジョーカーが今回の映画で描かれた程度の事で生まれるものなのか?という点です。


バットマンを苦しめる最凶の存在だけに、もっとエグくても良かったかなと思いました。 


でももしかしたら、今回の映画で誕生した「ジョーカー」は実はたくさんいるジョーカー予備軍の一人に過ぎず、人はだれでも状況次第で悪になりえるという「ダークナイト」版のジョーカーの思想を具現化したのが今回の作品、なんて事も想像しました。


なんにしても、このようなバットテイストの映画がこれだけ話題になるのは、映画を観るお客さんを育てるという意味で非常に意義のあることだと思いました。
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