Ginny

ジョーカーのGinnyのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
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バットマンシリーズでまともに見たことがあるのは『ダークナイト』だけ。
そんな人の映画の感想。

何を言えばいいのか、どう思えばいいのか、定まらないけど、上映時間中ずっと惹きつけられっぱなしでした。

前半、ホアキンフェニックス演じる"アーサー"の日々はつらくて苦しくて恐ろしくて 映画を見るのをやめたい、映画館から出たい、と思った。
そして、そこで共感性羞恥でつらくなるのかなと思って感情スイッチをオフすることを意識。でも見ていくうちにそんな理性は持たず引きこまれ、またつらくなる、怖くなる。

ところが アーサーが フランクリンショーに出かけるために 所謂ジョーカーらしい装いで初めて 外に出たシーン。
陽気な音楽に合わせて 外の石階段を踊りながらくだるジョーカーを見て、めちゃめちゃ心踊った。
ジョーカーだ!!!!
『ダークナイト』のヒースレジャー版ジョーカーの様子を彷彿とさせるホアキンフェニックスのジョーカーの演技に 感激した。
こういうのが見られるなら 同じキャラクターを違う人が演じる面白さがある!
全く違う、パラレルワールドだからと割り切って リメイクしていくのもそれはそれの面白さはあるけど衝撃はない。
ホアキンフェニックスの演技に脱帽した。

と、ここまで良かったのに。
ジョーカーはフランクリンショーで 言ってはいけない発言をした。
どんな気持ちで 日本版の翻訳家は翻訳したのだろうか。

バス停で待っていただけで 命を奪われた あの事件が起きた当時。
「ある層」を危険視し、事件に対して慎重に発言すべきという記事が出た。(のに 感情的になりすぎるあまり、そして その記事が言っていることを理解できずに 自身の正義感を小さなwebの画面で繰り広げた人々に邪魔されてしまった)
その 「ある層」をさしたことを、ジョーカーは自身の今として 語った。
これが恐ろしくてたまらなくて、よく!こんなことを!大衆が見る映画で!と憤りにも近い気持ちを抱いた。

だからこそ 心湧いたこともあっても 面白いと思っても 評価をつけない、としようと思っていた。

それなのに。
ラストシーンがあまりに最高で 映画としては星5です。

それでも。
本当に星5なのか、踏み切れない自分がいた。自分が今生きてる世界を思えば安易に映画だけを評価できない。
映画の時は 映画ハイになって ジョーカーのカリスマ性にあてられてしまっていた。不覚。
でも、そうなんだ。
ほんとに そうなんだ。
ジョーカーに心が湧き立つ自分もいる。

で、時間が経って アーサーの実情を思い返して苦しくなり 今の日本の世の中にどれだけの同じ境遇になりかねない人がいるのか?とおそろしくなった。

自分が 良くないと思う人々の思想を、心を矯正し 改心させ 同じ思想に統一させること、無理矢理に、それが正義なのか?正しいのか?と思うと違うとわかる。

違うことをお互いが理解し 尊重し合う?
短文で この混沌とした世の中を整理整頓する術は言い表せられないと思う。
常に矛盾がいっぱいで 自分の意思は伝わらなくて 誤解を招いて 自分の知らない世界と考えがあり 交わらない人がいて その大勢のいる世界で暮らしてて。
この混沌とした世界を生きていく。だけなんだと思う。

何かをどうにか 完璧にしきることはできなくて 希望を持って 願って 衝突して 死んでいく。
人生なんだな。と思うと やはりこの映画の締め方は最高だったなと思わずにいられない。

この矛盾もどうしたらいいものか。
ホアキンフェニックスはアカデミー賞受賞してほしい。スピーチが聴きたいから。
なんていうのか。
この役を演じ切って世の中に産み落とした俳優としてどう思うのかな。
監督にも同じことを思う。考えが聞きたいな。

で、結局スコアはつけないのです。
なんて劇薬映画なんだと思います。取り扱い要注意。

評価しきれない。
映画体験としては至上だったけれど 今の世の中を生きる私個人としては苦しい内容でした。
Ginny

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