ゼロ

ジョーカーのゼロのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2
僕が狂っているのか?世界が狂っているのか?はたまた悲劇なのか、それとも喜劇なのか?

本作品は、バットマンに登場する最強の悪役・ジョーカーが誕生するまでの物語です。あのジョーカーを演じたのは、ホアキン・フェニックス氏。役作りのため24キロも体を絞り、劇中でも骨と皮の姿を露わにしています。また第76回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した作品でもあるため、大人が楽しめる作品となっています。R15指定なので子供は観ていけません。

正直に言って評価に困る作品です。アメコミ映画で金獅子賞を受賞する作品なので、質は高いです。ジョーカーになる前のアーサー・フレックの人生は悲劇でした。母親から虐待を受けていたのを隠され、職場では理不尽なことでクビになり、憧れのスターにはバカにされ、父親の真実を知ったときに笑うしかなかった。誰もが絶望する境遇にいて、たまたま道化師を演じることにより、人から求められるようになったら、そちらの道に進むのも理解できます。

誰もがジョーカーになる可能性がある。徹底的な現実を描いているのもああって、演出は控えています。『ハングオーバー』シリーズを手掛けたトッド・フィリップス監督だからこそ、悲劇を喜劇として描こうとする、シュールな笑いを取りにいく演出が施されています。悲劇を劇的に描こうとすれば、もっと派手にできる要素はありましたが、それは敢えて外してやってない印象があります。

脚本も演出も演者も良いのに、なぜ評価に困るかと言えば、バットマンシリーズのスピンオフであることを感じさせない作品になっているからです。ホアキン・フェニックス氏の演技は圧巻ではありましたが、ジョーカーの役を演じなくとも圧巻であると感じたと思います。表題が別タイトルでも、この作品を観た時に同じ感銘を受けたと想像することが容易です。

つまり、バットマンのスピンオフ企画である必要であったのかと。正直、ジョーカーのカリスマ性も、ジョーカーの陽気な感じも、キャラクターの持っている本質を受け取ることができませんでした。これからジョーカーに変貌していくのだから…と言われれば、それまでの話です。

総括として、アメコミの括りでは語ることができない作品であることに間違いはありません。1本の映画としても質が高く、バットマンワールドに深みを持たせた作品であることも事実です。

どうか自分の目で観て、感じて欲しい作品でした。
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