ウマノホネ

ジョーカーのウマノホネのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.0
“バットマン”については、アニメでも、実写映画でも(ベン・アフラックが演じるバットマン『バットマンVSスーパーマン』は見た)、もちろんマンガでも見たことがなく、
敵役の“ジョーカー”がどういう悪者なのかを知る前に、
その誕生を見ることになりました。

アーサー・フレックがいかにしてジョーカーになっていくのか!?

その変化は、物語の劇的な展開、顛末や、
その中で精神的な狂気に陥っていく迫真の演技によって、見事に表現されています。

さらには、物語に通底している退廃的な社会状況
(1980年代を時代設定としたゴッサムシティの様子。
労働者のストライキにより町にゴミが溢れ、精神者や老人介助の福祉政策が打ち切られ、
低所得者と富裕層との貧富の格差が拡大)
が、背景としてものすごく影響しています。

そこから、自らは意図しないながら、富裕層への反逆者、大衆の怒りの象徴、悪漢として持ち上げられていく風潮、というのは、いまの私達にも通じるところがあるように感じました。
(殺人事件などにたいして、ある一定の好意的、同情的な意見がネットの一部などで発生する、社会全体の歪みように)

また、ジョーカーがたびたび取り上げる“悲劇”から“喜劇”へ、とは、
一つには、大衆を巻き込んだスペクタクルへと展開していく点、つまり、劇場型犯罪へと移行してく点にあります(これも現代の凶悪事件などとも共通している)。

そしてもう一つは、
悲劇とは、人為的にではなく、逆らえない運命によって物語が(主に悲観的な)展開へと進んでいくものとするならば、
アーサーにとっては運命的な境遇にさいなまれながら、
ジョーカーとして、自らの運命を自らで切り拓いていこうとする決意から、実際の行動に移すまでの一連は、正に喜劇と言えるのかもしれません。