でんき

ジョーカーのでんきのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.8
『ジョーカー』は、主人公アーサーの心の移ろいを丁寧に丁寧に描いた良質な映画でした。そこには劇的な瞬間を経てジョーカーに覚醒するのではなく日常の隙間で怒りを暴発させてしまう生身の人間の姿が描かれていました。世知辛い世の中だからこの作品が生まれたのは必然でしょうんで。
しかし派手なことは何も起こらないからだいたい予想した通りの内容でした。ネタバレを踏んで困るとこなんてありません。たしかにケレン味に頼らず丁寧な作りの作品ではありましたが、あれのどこが衝撃で恐怖なのでしょうか?人に優しく出来ない人というのは普通にいるしアーサーはいつかやるタイプの人間で、観てるうちに「いいぞ、もっとやれ」という気持ちは失せていきました。

アーサーは貧困層の弱者ではあるけど、そこに自分を投影はしませんでした。できるだけ多くの人に共感してもらえるように戦略的にアーサーをド底辺という設定にしているだけであって、世直しのためにテロリズムにはしる映画ではありません。元々奇行が目立つ異様なアーサーが出会う人に優しくされないから、ジョーカーになるべくしてなったように見えました。近所の人から「いつかやると思ってました」と言われるタイプの人です。
あくまで貧困層という設定は、アーサーの身の上のイントロダクションであって、アーサーをジョーカーたらしめてるのは怒りの暴発です。アーサーが最初に人を殺したのは計画的なものではなかったから、踊る場面が
もうどうにでもな~れ

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に見えました。
しかし本当は、アーサーは適当なところで「怒り」を発散させたかったように思えてなりません。所属している職場の更衣室でからかわれてプレゼントされた銃を、もし本当に欲しくないのなら持ち帰ったりしないでしょうし。

自分はジョーカーを観て、「世の中には差別も暴力もあるし思った通り生きられないのは当たり前、人生には挫折と絶望しかない。世の中ってこういうものだよね」と思いましたが、しかしこの作品で衝撃や恐怖を感じるというのは、もしかして娯楽映画で綺麗事だけ描いたメッセージ性を真に受けて現実でもそうなのだと思っている人が多いのではないか。そしてアメリカ人は日本人よりもハッピーエンドではない物語に耐性がついていないのではないか、と考えました。
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