おたけさん

ジョーカーのおたけさんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2
これが彼の“that's life”
ジョーカー物でなくても成立する1本!

ご存知バットマンのジョーカーの成り立ちまでを描いたものですが、個人的にはここまで上手く犯罪心理構造を組み込んでるならいっその事バットマンのジョーカーでは無く全く違う1人の男の人生の映画として出してもいいんじゃないか!?と思うくらい重厚なトーンでしたね。

後天的な統合失調症による自我との葛藤、社会とのズレから猟奇犯罪者への目覚めとして段階的にギアをあげて行く。
そんなプロットが各所に散りばめられていて、奇をてらってなく、かつスタイリッシュにまとめている点は本当に近年稀に見る秀作。

完全なるジョーカーの完成(自我の崩壊と取とるか覚醒と取とるかは難しい所ですが)、殺しをした後に階段で踊るシーンなんてAppleのCMにそのままあっても良いくらいスタイリッシュな印象的なシーンでした。
殺しとは相対するはずの“笑い”や“スタイル”をぶつけるというセンス。秀逸すぎます。

カメラワークもカラグレも非常にアーティスティックな画作りで、音楽もフランク・シナトラの“that's life”の引用で主人公を光らせています。
“smile”も使ってましたが、自分的にはそっちのが印象的。
アーサーにとって“smile(笑顔)”とは擬似的に作られた“that's life(これが人生)”という、何とも切く、心理描写のコントラストに魅了されてしまいました。
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