緑茶

長いお別れの緑茶のネタバレレビュー・内容・結末

長いお別れ(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

Filmarks試写会で、中野量太監督の「長いお別れ」をユーロライブで。

素晴らしい、暖かな傑作。

今年観た映画の中で、一番かも。

ついこの前までは「愛がなんだ」が暫定一位でしたが、それを越えて来ました。

思わず涙ぐんじゃう所もあるけど、それは自然発生的に涙ぐんじゃうのであって、所謂お涙頂戴ものとは全然違うのです。

あまりにも深い感慨に触れた時、それが映画の物語だと分かっていても、人は涙ぐんでしまうのですね。

撮ってる監督の暖かな眼差しが感じられて、後味は胸に暖かな感慨が。。。

なにより、清濁合わせ呑んで暮らしてる登場人物、皆が愛おしい。

原作物だけれど、原作は尊重しつつも、中野監督がアレンジした脚本はただただ素晴らしい、の一言です。

最初の方の何気ないシーンが、後に強力な伏線となって回収される、あの中野監督作品の醍醐味が、生き生きと随所にあって、まるで中野監督のオリジナル作品のようでした。

最初の方でお父さんが読んでる夏目漱石の「こころ」の文庫本、本当に一瞬の何気ないシーンですが、物語の終盤、アメリカの孫の学校の先生の机に、Soseki NatsumeのKokoroが置かれているのが映ったり。

その最初の方のお父さんはちゃんと文庫本を読んでいるのですが、さすが名優・山崎努さん、段々とそれが変化して行きます。

トークショーで、順撮りでなく撮影されてる、と聴いて、益々唸りました。

山崎努さんの、脚本を咀嚼してそこにあるものを完全に理解する能力はさすが名優、ただただ敬服するばかりです。

あとお父さんは本の栞代わりに、葉っぱを挟んでいるのですが、娘たちもそれを習慣のようにしていて。

厳格なお父さんだろうけど、なにより愛情を注がれて育って、娘がお父さんに懐いているのが、
あの栞代わりの葉っぱのシーンで伝わって来ます。

この葉っぱは、じつは物語を縦に紡いで行く、とても大切なアイテムです。

出演してる役者さんが皆、演技の上手い人ばかりなのですが、竹内結子さんなど、中野監督に、また新しい一面を引き出されている気がします。

なにより、過剰な説明テロップなどなく、
ちゃんとシーンで撮ってみせてくれる中野監督が凄いです。
映画はこうじゃなきゃね。

そして、この映画のタイトル「長いお別れ」ですが、long goodbyeの「意味」が、英語では「認知症」を示す英語なのだと言うこと。

認知症の事を、「長いお別れ」と表現するのだと言う事。。。

なんて深い作品なのでしょう。

公開されたらまた何度か劇場で見届けて、まわりの人にも薦めようと思います。
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