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いつか家族にのmayaのレビュー・感想・評価

いつか家族に(2014年製作の映画)
4.0
肉まんとフナの煮付けの並ぶ食事の場の、なんと幸せなことよ。
雑魚寝しながら空想で料理するシーンと、ラスト家族で食事を囲むシーンが良すぎて、家族がいかに特別な存在か噛み締めてしまう。あんなに色んなことがあって、なんなら私は中盤まで「田舎の女の扱い、東アジアの最悪を地で行き過ぎでは?」「イラルクは二人の父親を殺すべきでは?」とか思ってたのに...。
私自身は家族制度には反対で、儒教的な考え方や血縁に強い結びつきを見出す作品は家父長的で嫌いなのだけど、本作の家族は「社会的制度として強い理由もなく結びついた」という「家族」の成り立ちの雑さを描いた上で肯定的に捉えているのがすごい。
家族に対して負の感情を持つ人は割と多いと思うが、本作の家族は、赦すでもなく、償わせるでもなく、ただ色んなことがあって、一緒に食事をする一時に光が溢れ、なんとも言えず愛しい。
後半、「別の映画始まったか!?」というくらい、貧困の描写に力が入っていて素晴らしい。売血にしても、村の閉塞感にしても、きっとあまりにリアルで、一歩躓けば転げ落ちてしまう貧困の淵で生きる人たちが少なくないことを思い知る。韓国の映画は、どんなジャンルものも必ず格差と貧困を日常のものとして挟んでくるなぁと感心します。韓国だからなのか、それとも日本の監督が日本の貧困を描こうとしないだけで、私の生きる国にも同じような状況の人たちがいて、私も一つ間違えばそちらに転げ落ちるのだろうか。この手の貧困を描いた作品に対して、私の経済的立場から、「リベラルでない!クソ!」とは正直言えない。大人が子供を守る社会も、女が男に物言う社会も、結局経済的余裕がある社会が成熟しはじめて出てくる議論で、日雇い労働の貧困層が限られた環境の中で見出す幸せを批判することが正しいのか、最近はよく分からずにいます。
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