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悪魔はいつもそこにのmofaのレビュー・感想・評価

悪魔はいつもそこに(2020年製作の映画)
3.7
トム・ホランドがおかしな役をしているというので、
観たかったヤツです。
ビル・スカルスガルドも出てるので、嬉しいし、
ロバート・パティンソン、ヘイリーベネットと、かなりキャストは豪華。

でも、こんな題名だし、良い話ではないだろうと思ったら、
その通りの内容だった。

出てくる人、みんな善人ではなく、
おかしい。
でも、演技のお陰でしょうか。
完全に、「こんな話あるかいな」
では終わらない。
 この作品においては、「宗教」すら、
「悪魔」なのかと
思ってしまう。
「信仰」も手段を間違えれば、
ただのオカルトだ。

無茶苦茶な作品だけど、その中にも、
きっちりと群像劇としての面白さもあり、
親から子へと受け継がれていく、
暴力の連鎖についても
描かれているので、
とても異質だけど、非常に面白い仕上がりになっているなと思った。

☆以下、ネタバレです☆

まず、トム・ホランドが最高でした。
ビル・スカルスガルドが父親役なんだけど、ふとした瞬間とか、
めっちゃ似てるんですよね。
 ちょっとした仕草とか。
この「遺伝」ってものが演技で感じられるからこそ、
善良で、愛する者を守りたいだけの
彼の中に、
「暴力の連鎖」という悲しいカケラを見つけてしまうのです。

 

 祖母に預けられ、そこで、
両親を失った少女と、
兄妹のように育てられる。

その少女が、牧師によって凌辱され、
妊娠させられ、
死を選んでしまう。

この子、めっちゃ可哀そうなんですよね。
でお、すっごく印象に残るシーンが
あるんです。
 妊娠してると知って、
首を吊ろうとして・・・
でも、直前で、「この選択は間違いだ」って気付くんです。
 死ぬのは間違っている・・・って、慌てて、首から縄を取ろうとするんだけど、
足元のイスが、ぐらついてしまって・・・・・
そのまま、自殺した格好になってしまうんですね。

 もう嫌なシーンなんですけど。
でも、そういう事なんだって。
自殺って、そういう事なんだよって、教えられたというか。
 最近、韓国ドラマの「もうすぐ死にます」という作品を観たんです。
これは、自殺をテーマにしているんだけど。
 私が、メッセージとして求めていたのは、
こういうレベルのメッセージだったんだと思ったんですよね。

大切な人がいるから、自殺はダメ・・・とかではなくて、
(いや、勿論、それも大切です)
死んでしまえば、終わり。
 もう、後戻りはできないんだって。
厳しいけど・・・自殺を扱うんなら、そこまでのメッセージが欲しいな・・・と
思っていたので、この場面を観た時は、
この作品の内容を忘れても、
この場面は忘れてはいけない・・・って
思ったんですよね。

 ちょっと脱線してしまった。

そして、その妊娠させちゃう、
クズの牧師を、
ロバート・パティンソンが名演!!
「TENET」の、「これが、美しい友情の終わりだ」って
言った人だとは思えませーーーん。
でも、カッコイイけどね!

そして、変な趣味の写真家。
 もう、この趣味が何か、よく分かんない(笑)
この変態の人に、振り回されるのが、
ライリー・キーオ。
エルヴィス・プレスリーのお孫さん。
そのお兄ちゃん。

・・・・という登場人物たちが、こう、
思いもよらぬ所で関わっていたりして、
なかなか、面白い脚本になっています。

 好き嫌いありそうだけど、とにかくキャストがいいんですよね。
トム・ホランドの悪い感じ。
すっごく、素敵。

肩越しの雰囲気とか、ホント、
父親の雰囲気そっくりで、凄いな~と思った。
タバコも似合う。

最後ね・・・・
結局、4人?殺して、他の町へ逃げ切るワケなんだけど。
この青年、車で揺られながら・・・

悪者を殺したから、
逆に感謝されてるんじゃ??
とか。
そしたら、また、あの町に戻れるんじゃ??

とか、思うワケなんですよね。

この時の表情が、
ごく普通の青年になっていてね。
まだまだ、少年のような表情で、
夢みてるって感じで。
妹を殺された恨みや、復讐を終えて、
肩の荷がおりたような表情でね。
 
妙な、爽快感を感じてしまって。
おいおい爽快感感じてるよ・・・
って、不気味な感覚に
陥ってしまった。
 
暴力とか恐怖とか、そういうものは、
人を変えてしまう。

最後の最後で、
普通の青年を覗かせたトムホランドの演技。
不意に、後ろを振り返りたい衝動に駆られた。

 悪魔に成りうる種は、まさに、
いつもそこにある。

 感じ方は人それぞれ。
色んな解釈の出来る、面白い作品でした。
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