半兵衛

狙撃の半兵衛のレビュー・感想・評価

狙撃(1968年製作の映画)
3.5
一流のスナイパーのこだわりまくった銃撃シーンはかっこいいけれど、鈴木清順かヌーヴェルヴァークを意識したようなアートチックな演出が変すぎてそういうサブカルとリアルな銃の描写が洗練されて組み合わさった現在から見ると珍奇な作風に。この映画の前年に製作された『拳銃は俺のパスポート』も手掛けた永原秀一の脚本も狙撃手の加山雄三が浅丘ルリ子にいつの間にか自分の仕事をさらけ出すなど所々「?」となるところがあるけれど、これも新しいアクション映画を製作するために作り手が試行錯誤していることを考えると味わいがある。

中盤の金塊強奪に主人公が参加→金塊を奪われた組織が雇った殺し屋に命を狙われるくだりも説明があまりないのに加えてそれを無理矢理西部劇みたく一対一の決闘で強引に決着をつけるラストにも困惑するも、ガンプレイとカット割がかっこよくきまってはいるので映画を見終えた時点では良い作品を鑑賞したような感覚が残る。

でも加山と浅丘が民族衣裳を着てダンスしている場面はあまりにもぶっ飛んでいるし役者が真面目に演じていることもあって吹き出しそうになるけどね。

ちなみに60年代末期から70年代初頭にかけて製作されたそれまでの優等生路線をかなぐり捨てつつスタイリッシュに仕上げた東宝ニューアクション路線の先鞭をつけた本作だが、東宝ニューアクションのファンで当時東宝が出していた映画ファン向けの雑誌に無名時代に批評文を投稿していた松田優作が永原と組んで『最も危険な遊戯』や『蘇える金狼』といったハードボイルド映画を作っているというのも興味深い。そういう意味では松田優作は日活と東宝、二つのアクションの後継者と呼べるのかも(実際優作の驚く演技は東宝ニューアクションの代表的役者の黒沢年雄からインスパイアされたらしい)。
半兵衛

半兵衛